Lethal Ability

□6話 人型魔人形
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それから、破壊者たちはグループに分かれて行動することになった。

ユレイヤは直様どこかへ駆け出してしまったうえに、通信機の電源を切っているのか声が聞こえないため、城の外の庭をアルオスとスロジェルが、地下をクロスとロイズが、城内の地上をヴァキネルが探索することになった。

もしも地上の探索が終わっていなかったら、地下の探索が終わったら戻ってきてほしいとのことだ。
クロスとロイズはそれに対して頷くと、城内から地下に入って行った。

「何だか薄汚れてて怖い場所ですね…」

「あぁ。」

そこは狭い通路になっていて、あたりは薄暗く、クロスの持っている懐中電灯が照らす道以外はほぼ見えない。

しばらく歩いていると、奥の方に明るい光が差し込んでいるのがわかる。
二人はそこまで歩いていくと、広い空間に出た。
誰かが住んでいるのか、その部屋にはお洒落なベッドと、沢山の花が植えられている。

ほのかな香が作り出すその空間は、やけに施設の花園のような落ち着きを帯びている。

二人は息をのんだ。
すると突如、二人が入って来た扉が閉まった。

響く音に驚き振りかえる二人。
クロスが扉を押し引きし、挙句撃ってもびくともしなかった。

「…罠か」

「えっ!?」

「俺から離れるな」

クロスはもう一度、部屋を見渡す。
ロイズを後ろに隠しながら通信機での通信を試みる。
…が、電源を入れても反応しない。
どうやらこの部屋は電波が完全に遮断されているようだ。

クロスはチッと舌打ちをする。

だが、通信が遮断されたという事は、外にいるアルオスがいち早く気づいている筈…
きっと異変に気づいたら何か策を練ってくれる。それまでの辛抱だ。

そう考えたクロスは深呼吸した。

すると、先ほど見たベッドのカーテンが開く。
ロイズは驚いてクロスの後ろに隠れる。クロスは身構えてその方向を見ると、まるで猫の耳のように髪の毛をはねらせた右目を隠している男が出てきた。
ジト目で睫毛が全体敵に長い。寝起きなのか彼はふあぁ、と欠伸をすると、八重歯がハッキリと見えた。

その男は、手の出ないほど長い袖で目を擦り、こちらを確認した。

「誰」

そして、首を傾げる。

「…俺たちは此処の探索をしている者だ」

クロスがその問いに答える。

まずは慎重に。
人型か人間か確かめる必要がある。


猫のような男は、そう答えられると目を細めた。

「…その服、破壊者か」

「…あぁ」

「何で今更此処を探索する」

『今更』この言葉を聞きクロスは確信した。


――――――――――コイツ、人型だ―‐――――――‐


此処で討伐戦が行われたことは破壊者か人型しか知らない。
一般人が知っている筈ないのだ。

クロスに緊張感が張り詰める。

「此処に高度な魔力反応があった。だから最近の魔人形暴走事件の鍵になるんじゃないかと思って探索している。」

「失せろ」

「!」

理由を説明していると、男が険しい表情で睨みつけてくる。

「…何か心当たりでもあるのか?」

「失せろ」

「………」

クロスが質問してみるも、人型は失せろの一点張りだ。
クロスは一つため息をついた

「失せようにも扉が閉じていて帰れない」

そういうと、後ろの扉を指差す。

「…勝手に人の部屋、入るからこうなる」

「知らなかったんだ。…帰る道を教えてくれたら帰るから、その前に質問していいか」

「やだ」

人型は即答する。クロスはあまりの即答っぷりに苦笑した。

「……そう言わずに」

「やだ」

「………」

これ以上聞き出しても無駄だと悟ったクロスはため息をついた

「では帰る方法を教えてくれないか?」

「…そんなものない」

「えっ?」

人型はそう言うと近づいて来た。
驚き、ロイズは縮こまっている。

「俺は人型魔人形、それはわかってるんでしょ。このままアンタらを返したら俺の居場所がバレる、また討伐戦のような事が起こる」

人型はクロスを見上げる。

「俺はそう言うの面倒だから嫌なんだ」

「…じゃあどうするつもりだ」

人型の言い分に眉間に皺を寄せてクロスは人型を見た。
すると人型はキョトンとして、首を傾げた。

「そんなの、アンタら殺すしかないよね」

「!!」

「此処で死んでも出られなくて死んだって事になるから、違和感ないし。」

人型はクロスたちと少し距離をおくと両手に双剣を出した。

「ま、待って!俺たちそんなつもりじゃ…」

必死に止めようと声を出すロイズをクロスが押した。
ロイズは床へ滑り込み倒れる

「いっつ…」

ロイズは顔を上げる。すると目の前には双剣を銃で止めるクロスと…人型の姿があった。
その光景にロイズは目を丸める。

人型は先ほどまで距離を置いていたはずだ。それを一瞬にして…しかもロイズが気づかないうちにここまで接近してきたのだ。
異常すぎるスピード力に、クロスは冷や汗を流した。
その光景を目の当たりにした瞬間、ヴァキネルが言っていた
「人型の戦闘能力は人間を上回る」ということを実感した。

これがたった6人で先代の破壊者達と戦った人型…

ロイズは格の差に大きな絶望を抱くと、途端に足がすくんだ。

「戦うのっていつぶりだろう、でもブランクなんか関係ないね。…アンタ俺より弱い」

「…言ってくれるな」

クロスはそう言うと両手の銃を砲弾した。
人型は双方から放たれた弾を剣で切り裂く、と同時にクロスが蹴りを入れるも、人型は床を蹴りひらりと後方に跳んで避けた。
そして、余裕そうに口に手を当てて欠伸をするのだった。

「…眠くなってきた」

「そのまま眠ってくれれば良いんだがな…っ!」

そう言うと、クロスは顔を引きつらせて銃弾を放った。
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