Lethal Ability
□1話 パンドラの箱
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爽やかな風の音が響く。耳を澄ませば葉が揺れる音すらも聴こえる。
そんな朝に、淡い水色の、ツンツンとしていて短い髪の毛を揺らし、少年ロイズは目を覚ました。
瞳を開けば石の隙間から流れ込む日差しに、微かに目を細めると、見上げた天気の清々しさにロイズはにっと笑みを浮かべた。
「おはよう」
ここは大きな大きな地下の部屋。
ロイズはいつの間にか此処にいた。
詳しい事は覚えていないが、妙にこの場所が落ち着くので、何故自分がここに居るのか考えることもなく此処に住み始めた。
外に出ようと試みた事もあるが、どうやら唯一の出口らしい階段の先の扉は、何度上に押しても、重すぎてロイズには開けなかった。
なので全く外の世界を知れず、ただただ地下にある植物を喰らい、生きてきた。
そんなある日だった、ロイズが外の世界を知ることになったのは…
ゴンッゴン
扉の外から音がした。
妙だ、今まで外から音が鳴ったことなんてなかったのに。
不思議に思いながらも、階段を登ってロイズが問いかける。
「誰かいるの?」
…ゴンッ
それに返すかのように一つの音。
どうやら扉の先には人がいるようだった。
「君は誰?俺はロイズ。」
少しばかり興味の湧いたロイズは、扉の先に話をかけてみる。
そうすると扉の先からしていた音がやんだ。
「…誰かそこにいるの?」
人がいるのか不安になったロイズは、もう一度、問いかける。
もしかしたら扉の上に、偶々何かが落ちただけなのかもしれない。そんな考えがロイズの頭の中で駆け巡る。
羞恥を呼ぶその思考は、ロイズを自然とその場から離れさせようと足を一歩、後ろへと下げた。
その時、ロイズの羞恥と言う雑音をかき消すように、ギギっと言う音が扉から奏でられ、重苦しい音色とともに扉が開いた。
外界から差し込む光。
あまりの眩しさから、反射的に目を細めたロイズは、そのまま扉を開けた相手を見上げる。
そこにはオレンジの髪をなびかせた…
「僕の名前はテトラ」
一人の少年が立っていた。