強く儚く

□2話
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『太宰さん…趣味の悪い本ですね。』

「そう?」

音符が浮かびそうなくらいニコニコと本を捲る太宰に、うげ…という表情で太宰の本を覗き込む茜に、先程からビクビクしている敦。

3人は虎を退治すべく、ある倉庫に居た。

そして倉庫に月の光が差す時が近づいていた。

「本当にここに現れるんですか?」

「本当だよ。」

『なんで、私まで…こんなにか弱そうな子を……』

茜は先程からぶつぶつと文句を言っている。

「心配いらない。虎が現れても私にかかれば敵じゃないよ。こう見えても『武装探偵社』の一隅だ。」

『そう見えないって自覚があったことに驚きだわー。』

「はは…すごいですね、自信のある人は。」

苦笑しながら暗いことを言う敦。

よっぽど、辛かったんだろうな…。

『あ、』
「…却説、そろそろかな。」

太宰は本を閉じ、茜は箱から降り、それぞれ言った。

その直後ガタンと音がし、敦はあからさまに怯えている声を出した。

「今……そこで物音が!!きっと奴ですよ、太宰さん!!」

「風で何か落ちたんだろう。」

『あんなところから虎が出てくるわけないよ?』

「太宰さんも茜ちゃんもどうして判るんです!!」

敦くん、気がついてないんだね…。

「そもそも変なんだよ。いくら経営が傾いたからって養護施設が児童を追放するかい?」

『1人や2人追放しても何も変わらないよね。』

「2人とも、何を言って…」

茜は、相手の視線を誘導するかのように姿を現した月を見た。

「…え?」

と呟き、敦は月を見た。

そこで、敦の動きが止まった。

「君が街に来たのが2週間前。」
『虎くんが街に現れたのも2週間前。』

茜は月を食い込むように凝視して動かなくなった敦から離れ、太宰は箱から降り適当に歩き、2人は交互に言葉を紡ぐ。

「この世には、異能の者が少なからずいる。」
『その力で成功する人もいれば……』
「そうでない者もいる。」
『施設の人は虎くんの正体が敦くんだって分かっていたんだよ。』
「君が異能の者だと、ね。現身に飢獣を降ろす月下の能力者ーー」

そこまで言い終わる前には、敦くんは立派は虎くんになっていた。

「オオオオオオ…」

雄叫びが鳴り響く。

太宰は、虎の前に立ちはばかる。

茜は、倉庫の入り口に背をもたれる。

虎…敦は太宰に翔びかかる。
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