文スト

□恋、即チ事件
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「名無しさーん。」

探偵社内の掃除をしていると、自分の名前を呼ぶ声。

「乱歩さん、どうかされましたか?」

目の前に突き出されたのはラムネの瓶。

「はい。お願いね。」

「いつもは春野さんに頼んでるのに…」

「彼女ならいないよ。だから、ね?」

デスクの上に座っている彼に、下から見上げられる。

「分かりました。」

給湯室に持って行き、木槌で瓶を割る。
転がるビー玉。

「あ…」

そのビー玉を捕らえた指からは血が。
硝子の破片で切ってしまったのだろう。

「まーだー?」

「今持っていきます!」

慌ててビー玉を掴み、乱歩さんの元へ。

「どうぞ。」

「ありがとう。」

太陽にビー玉を翳している。
嬉しそうに目を細める彼に目を奪われる。

「では、失礼します。」

再び清掃に戻ろうとすると、手首を掴まれる。

「指、見せてごらん。」

「あ…」

「痛そうだね。止血した後、これ、貼っておきなよ。」

そう言って絆創膏を渡してくれた彼。
その直後には袋の中の駄菓子に目が行っていたが…

「ありがとうございます。」

乱歩さんの優しさにほっこりしていたが…

「名無しさん。駄菓子買ってきて。」

そんな気持ちはすぐに吹き飛んだ。
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