白銀世界
□プロローグ
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イタリアから日本までの約十数時間。
日本はほのかに暖かい。
『んん〜!!やっと着いた〜』
ただいま、日本。私の故郷。
たくさんの人混みの中、血なまぐさい自分の手を悟られないように私は空港を後にした。
こっちに来て最初に行く場所があった。
私の家だ。14歳で家出……というよりは自立してから一度も帰ってない。きっとお父さんは心配してるだろうな……
『あれ?ここら辺だったかな…?』
流石に8年も来てないと、道も忘れているな。時の流れは怖い怖い
ーガラガラー
ともかく、何とか記憶をたどって実家の寿司屋の引き戸を開ける。
「おー?武か〜?お父ちゃんまだ仕込み中だから話しなら後で……」
『お父さん!!』
「なっ!?」
懐かしいその名を口にすると、素っ頓狂な声を上げて包丁を落す、私のお父さん。
少し歳をとったからか、シワが目立つ。
「な、な、名無しさん!!おめぇなんで…!」
『まぁまぁ、落ち着いて?』
「落ち着いていられるかっ!!おめぇ、8年間も連絡もなしに……くっ…何やって……」
怒られると思ったら涙を流す自分のお父さん。懐かしさと愛しさで、私の視界も少しぼやける。
『ごめんね、お父さん。今回の来日もお仕事だからゆっくりできないかも……、でもここに泊まってもいいかな??』
「おう!おめぇの部屋はあれからそのまんまだ! その前に腹減っただろ?寿司食うか?」
『ううん、武に会いたいな。あの子今どこにいる?』
武は私の弟で、私が出ていった時は確か6歳だったはずだから、8歳差の唯一の弟だ。
「確か、学校の補習があるとか言ってたなぁ。まっ、でもあいつのことだから友達と遊びにいくんじゃねーか?」
うーん、と首をかしげながらお父さんは言う。
「お友達」あの、能天気な武にも休日に遊びに行くような友達がいるんだ。元々人懐っこい子だったしなぁ。どんなお友達なんだろうか。
『わかった!ありがとうお父さん。私武に会ってくるよ』
お寿司は晩御飯がいいな そう付け加えて私は実家を後にした。
2016/05/04編集
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