白銀世界

□弟か鮫か。
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「姉貴?どうした?具合でも悪いのか?」



あの中山外科医院での、出来事があってから9日経ち周りの様子が少し動いた。


武はお父さんに裏の道場で剣を教わっている。
たまに覗きに行くけど、元からの素質なのか、武の剣技はほぼ完成していた。



『ううん、何でもない……何でもないの。』



なのに私は、あれから塞ぎ込んでしまった。あまり外には出ず、部屋にこもっている。
誰にも会おうとする気分にはならなかったのだ。



一目惚れ……。
リボーンちゃんの言葉でなんとなく自分の置かれているこの状況に気がついた。

まさか敵に恋をしてしまうだなんて……


その気持ちをどうにかなくならそうと思っていても、忘れたころにスクアーロさんの夢を見る。
悪循環だった。



「そか、親父も心配してたぜ?」


ドア越しに、武の困った声が聞こえる。


ごめんね、武。
私は申し訳なくて武に顔を合わせることが出来ないんだ。
あなた達の敵に恋にも似た感情を抱いてしまった。


「姉貴、俺今から剣の練習すんだ。
見に来てくれねーか?」



今日で完璧にできそうなんだと言った後、武は私の部屋の扉を開けた。









『すごい……』


武の成長は凄まじかった。
お父さんが言う、時雨蒼燕流のすべての型をやってのけている。
その真剣さ、気迫はマフィアである私も驚くぐらいだ。



「へへっ、姉貴どうだった?」


すべての型の伝承を終えた武は、いつもの爽やかな武だ。



『凄いよ、こんな短期間ですべて身につけちゃうだなんて……私なんて1ヶ月はかかったのに』



「たった1回型を見て真似しただけだけどな」



『ふふっ、なまいき。』



武の才能は本物だ。あとは鍛錬次第で変わってくるはず。
なんだか自分の弟なのにとても大きい存在に見えてくる。



「姉貴、やっと笑ったな!」



『え?』



「最近元気なかったからよ。心配したんだぜ?」



弟に心配させちゃうだなんて、私もまだまだだ。
日本に来てから何回も武の言葉に助けられているのだから。


敵を好きになっても関係ない。
考えるだけ、仕方が無いんだ。


『なんか、弟が生意気だからお腹減ったな〜 ほら、帰ろ!』



取り敢えず今は、武が戦いで勝つことだけを考えよう。

私のたったひとりの兄弟だから。
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