賢者の石
□プロローグ
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私、柏木 零は何処にでもいる、普通の社会人だ。
普通と言っても、出来がよく自分とは違って将来性も定まっている妹に、少し劣等を感じているので普通と言っていいか分からないが。
そんな妹に言われた事がある。
今の会社行っていて楽しいの? と。
化粧して臭いのキツイ香水を毎日付けているお前にだけは言われたくない、と零は言いたかったが、そんな事言える訳がない。
だから零は、曖昧に笑うだけに留めていた。
出来のいい妹に見下されて、おまけに両親からも比べられて。
零は両親に言ったことはないが、そんな生活に吐き気がしていた。
叶うなら、自分の事を誰も知らない世界に行きたい。
そんな願いなんて叶うはずがない、そう思っていた。
少なくとも、それが叶うまでは−−。