夢物語

□ちょこれいと・らびりんす
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「どうしたんだい?」
「・・あ、いえ・・。」

冬の陽が早くも沈んでしまった一日の終わり、一番顔を合わせたくない人に感づかれてしまった。

青いリボンをかけた、チョコレートが入った箱をなくしてしまった日のこと。
本当なら仕事も終える今、あの箱を震える手で渡していたはずなのに。

立て掛けた手鏡に写る、顔面蒼白なわたしと困った顔の彼。
探偵社で一番慕っている太宰さんに渡したかったのに、チョコレートは煙のようにふわり、一瞬にして消えてしまった。

「私で良ければ相談に乗るよ。だから元気を出して?ほら。」

わたしの目線に合わせるみたいに膝をついて、マジシャンがするように手のひらからポンと出されたのは、キャンディーみたいな包みのまんまるチョコレート。

「今日は好きな人にチョコレートを渡す日なんだってね。」

撫でる手つきは妹を宥めるみたいな感覚で、わたしは涙をこぼすばっかりで、いつこの気持ちが伝わるのか分からない焦りを、体が溶けるほどの甘さで中和した。



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