夢物語

□ちょこれいと・らびりんす
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「帰らないのか?」

そう聞かれたのは窓の外が藍色を濃くした時間で。
すっかり夜になってしまったことに気づいたのもその時だった。

「・・あ、えっと。」
「夕方頃からずっとだろう、何をそんなに探している。」

後ろから真っ直ぐに声をかけられて、肩が意思に反してびくついた。
本人が居ないのを見計らって探していたのに、その事が全然隠せてないなんて。
なくしてしまったチョコレート。
国木田さんにかかればすぐ見つかるのだろうか。
そんな甘えた気持ちをぶんぶん振って払い落とす。
だって渡したかったのは国木田さんなのだから。
本人に探してもらうなんて、どんなに酷い罰ゲームでもそんなの無いよ。

「大丈夫、です。気にしないでください。」
「そうか。・・・探し物と言うのは、願いが叶った時突然見つかると聞いたことがある。」
「願い事・・。」
「今日はまだその時ではないのかもしれんな。」
「・・でも、」
「もう夜も遅い。夜道は危ないから帰るぞ。」
「え、う、ぁ。」

言葉にならない狼狽えた声をあげるわたしを引っ張って、探偵社の明かりは落とされた。
帰り道、暖かいチョコレートドリンクを買ってくれた国木田さんを見ていたら、わたしのチョコレートは明日見つかるんじゃないかと思えてきた。



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