忍びとの恋
□痛み
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「才蔵さん・・・わっ」
「・・・」
俺は彼女を抱きしめていた
何でもないというように
安心させるように
「才蔵さん?」
「お前さんが気にすることは何もないから」
返事を返すように凛も抱きしめ返した
―数日後―
俺はいつものように屋根の上で昼寝をしていた
彼女は厨房で昼餉の準備をしている
雪が現れてから数日は特にこれといった変化もなく平穏に過ごしていた
清広も、もちろんあれから姿を現してない
これから、どうするかと考えていた時―
「きゃああああ」
突然、厨房から悲鳴が聞こえてきた
嫌な予感がした俺はすぐに厨房へと向かった
「大丈夫ですかっ」
心配に声をかける女中達の中心にいるのは、うずくまっている凛だった
「何があった」
「そっ、それが凛さんが」
ちらりと辺りを見渡すとそこには割れた湯呑があった
おそらくその湯呑にはあらかじめ毒が仕込まれていたのだろう
すると片付けようとしたのか、割れた湯呑に触ろうとする女中に‐−
「触るなっ」
「・・・っ」
驚いたのかその女中はその手を止めた
「才蔵様?」
「あとは俺がやっとくからお前たちは戻れ」
凛の周りにいた女中にそう言うと皆その場から離れた
「さいぞ・・・さん」