忍びとの恋
□好きor嫌い
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「才蔵さんが嫌いです」
「・・・」
(え、なんで言ってることが・・・)
私はある出来事を思い出していた
遡ること数刻前----
私は、いつものように洗濯物を取り込んでいた時---
「久しぶり、凛ちゃん」
「わっ、雪さんっ」
突然現れた雪さんに驚いた私は洗濯物を落としてしまった
---が、落ちる寸前で、雪さんがすべて受け止めていた
「ほら、危ないわよ」
「あ、ありがとうございます」
ふわりと微笑む雪さんにお礼を言い、洗濯物を縁側に置いた
「そういえば、雪さん今日はどうしたんですか?
才蔵さんに用ですか?」
「貴方に用があってきたのよ」
「私に・・・ですか?」
じりじりと距離が近づいてきて、私は数歩後ろに下がった
「警戒してるの?ふふ、大丈夫よ」
「えっ、あの、これはその・・・」
雪さんとの距離が近づいたその時---
「何してんの」
「あら」
「才蔵さん」
才蔵さんに腕を引っ張られて彼の腕の中に納まる
「何しに来た」
「やあねえ、そんなに睨まなくても」
「・・・」
屋根の上で、洗濯物を干している凛を見ていると突然、雪が現れた
俺の姉である雪だが、今まで良い事が起きたことはない
理由はどうであれ凛に仮死薬を飲ませたのは史実だ
そんなことが彼女自身、身をもって体験しているはずなのにいつもと変わらずに接している凛に内心呆れている
「今回は、貴方に用があってきたのよ」
「私・・・ですか」
「そ、というわけで」
それだけ言うと俺の腕の中にいた筈の凛が消えた
「だから、お前は甘いのよ」
「・・・っ」
いつの間に木の上に移動したのかそこに雪がいた
もちろん凛もいる
「凛を返せ」
「あら〜〜、そんなこと言って返すわけないでしょ。じゃ」
そう言うと、雪はその場から消えた