忍びとの恋

□痛み2
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「才蔵さん・・・」
「なに」
「あ・・・いえ」

そう言うと俺の袖を掴んでいた手を放した

「じゃ、行くよ」


俺はそれだけ言うと部屋から出た
彼女が言いたいことは分かる
だがあえて言わないのは俺のためなのだろう
けど---
そんなことを考えていると、ふと厨房から何やら話し声が聞こえる

俺は厨房に入らずに女中達が話している内容に耳を傾けた

「えっ、ほんとですか」
「ええ、何でも----」
「・・・」


俺はその内容を聞き取ると何事もなかったっかのように厨房に入った

「ねぇ」
「はいっ」
「これ片付けに来たんだけど」
「あっはい・・・」

空っぽになった膳を出すと、そのまま受け取った女中を見るとその場から離れた

「・・・」

俺はさっき聞いた話の内容を思い出していた

「何でも見る限り怪しい商人がここ2日訪れているらしいのよ」
「しかも、その商人ただ訪れているだけで特に何もないそうなの」

(・・・)

女中たちが話していた"怪しい商人"というのは恐らく---

(いや・・・)


俺の思い過ごしだろう。そう思いながら引き手に手をかけ今まさに開けようとした時---

「いやっ」
「凛っ」

凛の悲鳴が聞こえて嫌な予感がした俺は乱暴に襖を開けた
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