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□Veronica@
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「ほら、かかってきなよ」

とんとん、と肩に担いだ木刀を弾ませながら、意地の悪い笑みを浮かべるのは、十一番隊四席の桐谷ゆにである。

この隊に配属された当初は、その可憐な容姿と見事に繕った化けの皮で、蝶よ花よとまるで何処かの姫君のように扱われていたのだが、次第に化けの皮が剥がれていって今ではこの調子だ。

既に鍛錬所には屈強な若者達が伸びて山積みになっている。

この男達を見事力で押さえつけ、その可憐な容姿で惑わし、また痛めつける。

飴と鞭がとてもお上手な十一番隊のお姫様は暴君なのだ。

十一番隊には畏怖さえ抱かれる彼女だが、その化けの皮は戦いさえしなければ剥がれる事は少なく、他隊には彼女を純情可憐な聖乙女と唄う者だっているくらいなのだ。

それほどの美貌の持ち主だから故残念なのだが。

「なっさけねーな、お前ら。まじで【自主規制】ついてんのか? 私が潰しても問題ないんじゃねーの」

「やっ、やめろよお前が言うと洒落になんねーんだよ!!」

鍛錬所の入口に控えていた三席の斑目一角が立ち上がってずかずかとゆにに近づいていく。

「一角、そんなとこおさえて歩かないでよね気持ち悪い」

ゆにが言う事を想像したのか、股間を押さえて歩く一角に冷たく言い放ったのは綾瀬川弓親だ。

「あ〜、二人共遅いんだから」

「また今日も可哀想なこったぜ…」

「弱いのが悪いよね!」

「最初はあんなに皆君のこと可愛がってたのに慈悲ってものがないよねゆにには。」

ご愁傷さまだぜ、と視線を落とす一角と、やれやれ、と呆れたように首をふる弓親だが、当の本人はまるで気にしてないないご様子。

「だから、弱いのが悪いよね!」

ケタケタと悪びれもせずに笑っている様子がなんとも憎らしいのだが、言葉のとおりゆには強い。

あの剣八が武芸に惚れ込んで流魂街から連れてきた女なのだ。

彼女の性格をわかった上で何も言わずに十一番隊に放り込んだ剣八も相当に意地が悪い事は確かだ。

「毎日こんなにぼこぼこにしてて楽しいのか? 一方的だろ?」

「僕なら絶対しない、こんな無駄なこと。汚れちゃうじゃん?」

「無駄ではないよ、躾の一環っていうのかな?」

まるで猫か犬か、愛玩動物に対するそれのように言うものだからなんとも理解が追いつかない二人だ。

「最初の戦いの時この子達には、私に勝ったら私のこと好きにしていいよって言ってあるんだよね。ただし負けたら勝つまで私の玩具ね!って。」

「ばっ、馬鹿っ、好きにしていいってお前っ…///」

「なに顔赤くしてるの気持ち悪い」

「これだから困るよね発情期の猿かよ。普通こんなムカつく女取り敢えず殴るだろ」

「はっ!? いや、そうか…/////」

「一角ってば変なこと考えたよねサイテー」

「いやーんっ、斑目三席のえっちー////」

こうしてほんとに顔を赤らめて目線を泳がすようなゆにはほんとうに可愛いのが末恐ろしい。

「私痛いのが嫌で強くなったんだから負けるはずないよ。 けどもし負けちゃったら痛いのやだから気持ちいいのならありだよね〜?」

紅い唇をぺろり、と舐める仕草は妖艶で、その恍惚とした表情は男の欲望を軽々しく逆撫でるのだ。

「簡単にそういう事言わないの」

「そっ、そうだぞそんな顔しても騙されねーからなっ!?」

「へぇ、どうだか〜??」

「ほんとに君わかんないよね、実はめちゃくちゃ尻軽淫乱アバズレ女だったりする?」

「最低弓親そんなに女の子貶して!!」

「いや、お前だったらそうであったとしても驚かねーよ…」

「はっ、一角まで!! 」

うるうるとゆにの目に大粒の涙が溜まっていく。

次第に零れそうになり、ゆにが耳まで顔を真っ赤にし、震えていて、それでいて可憐なかすれた声で口を開いた。

「…は、はじめても…まだ、だもん…/////」

突発的な興奮状態による出血。鼻血。

「自分でやっといてなんだけどここまでだとひくわ、クソ変態共…」

さっきまでの乙女はどこにいった?と誰もが聞きたくなる程の人の変わり様だ。

「男って馬鹿なんだな、可哀想だ。」

ゆには軽蔑の一瞥を隊員達に向けると、顔洗ってくると鍛錬所を後にした。

つくづく女とは侮れないものだ、とそこにいる全員が思うのだった。
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