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□VeronicaA
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昼時に差し掛かった十一番隊舎。
今日は平和であった。
というのにも理由があった。
「ぐえ〜疲れた」
いつもとはまるで違うぐったりとした顔をして、ゆには机に突っ伏した。
「あとちょっとだから、ね?」
同じようにげっそりとした弓親が、労いの言葉をかけながら前髪をかきあげた。
事の発端は昨日の定時間際。
珍しく隊長である剣八がゆに達のいる部屋にやってきたかと思えば、書類の束をゆにと弓親に渡したのだ。
これ明日の昼までだ、という悪夢のような言葉を添えて。
剣八のことだから、山積みで放置していて存在すら知らず、提出先である四番隊からお小言を頂いて探してみれば……というのは簡単に予想ができる。
そこで苦労するのがゆにと弓親だ。
まともな机仕事が出来るのは十一番隊では限られているのだ。
…残念ながらこういう所だ。
ゆにと弓親が昨日から全力を尽くして書類の山と格闘していた。
「ふぅ、私の分は終わり。弓親あとどのくらい?」
「僕もこれ書いたら終わりだからもうすぐ」
間に合いそうだ、と互いに幸薄く笑うが、締切まであと半刻を過ぎていた。
「…よし、終わり。出しに行こうか。ついでに飯でも食べてこよう」
「わーい、賛成。私と弓親のこの疲れた顔みたら卯ノ花隊長許してくれるよね」
ぱちり、とゆにはウインクする。
その腹黒い考えを巡らせているとは思えない無邪気な姿だ。
「毎度毎度だけど隊長と一角許さない」
「一角に奢らせようか」
「さんせーい!」
今頃鍛錬してるだろうから、と弓親は考えを巡らせる。
「じゃあ、四番隊に行って、鍛錬行って一角捕まえて、ご飯食べて、今日は早くあがらせて貰って一緒に餡蜜食べに行こ!」
ゆにの提案に、いいね、と弓親は口角を吊り上げる。
相変わらず悪知恵の働くのがこのふたりだった。