チビー's(長編)

□平和な一週間
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 仕事を辞めてしばらくはのんびりするつもりだったのに、なんだか、仕事している時よりも忙しいのは気のせいだろうか?いや、気のせいじゃないだろう、世の中のお母さんは本当に偉大である。さて、そろそろ夕飯の支度でもしよう。今日の献立は何がいいか・・・。


「てつだいます。」


 透君は本当に(秀一君が関わらなければ)良い子だ。


「ありがとう。では、お米を研いでもらえますか?」


 透君は小さな手でせっせとお米を研いでいる。本当にかわいい。癒される。でも、可愛いと言うと拗ねちゃうから心の中で悶えるに留めておく。誤解があるといけないから言わせてもらうと、秀一君も可愛いのである。眉間にしわを寄せて、新聞読みながら野菜スティックを食べている姿は、小さな子が父親を真似しているようで悶える。なんだかんだ言いつつ、今の状況を一番楽しんでいるのは私なのかもしれない。彼らにしてみれば、楽しいなんてこれぽっちも感じていないのかもしれないが。


 さて、今日の献立は南瓜コロッケである。子どもにも食べやすいように小さく丸めて油で揚げていく。透君に野菜をちぎってもらいお皿に盛りつけていく。みそ汁と炊けたご飯をよそえば夕飯の完成。・・・透君の眉間にしわが寄っている。可愛いお顔が台無しだ。


「ナマエさん。まえからおもっていたのですが、しょうしょくすぎではないでしょうか?ボクらよりもすくないのは、しんぱいになります。」
「ダイエット中なの。それに仕事もやめて運動不足になりがちだから食べすぎは禁物なのよ。」
「ダイエットのひつようはあるのか?みたかんじ、もっとたべたほうがいいようにおもうのだが?」
「秀一君。発言には気を付けたほうが良いよ?今のはセクハラにもとられるよ。」


 秀一君が私の体を頭からつま先までジッと見つめるものだから、苦笑いしてちょっとだけ注意する。今の姿ならぎりぎりセーフでも大人の姿でその言動はアウトだろう。言われた本人はキョトンと頭にはてなマークをたくさんつけているようだが。透君は話を逸らされてムッとしているが、こればかりは譲れないのである。


 見た目は幼児でも中身は大人。さすがに食べ方はきれいである。もっとこぼしたり汚したりするかと思っていたが、きれいに食べる。小さな手では箸が扱いずらいようだが、幼児用の箸を買ったら問題なく使えるようだ。本人たちはとっても不服そうではあったが。
 すったもんだしながら、彼らと共に過ごした一週間は何事もなく平和に過ぎていった。
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