マーブル《シーズン3》
□決断は急がなくても良い
1ページ/2ページ
すごく困ったことが起きた。私、どうやら記憶喪失だったらしい。
すでに過去形ですが、なにか?
だって、思い出しちゃったんだもん!コナン君を見た瞬間…名探偵コナンを。この世界がマーブル模様なことも、名探偵コナンの漫画やアニメを覚えているのは私だけで、オタク仲間の友人も一切覚えていなかったことも、映画のストーリーに巻き込まれたことも、本来蘭ちゃんがなるはずだった記憶喪失に私がなっていることも!全部思い出しちゃったんだもん!
一番の問題は、まだ、ストーリーが終わってないってことだ。本来なら逆行性健忘症だった蘭ちゃんの記憶が戻るのはストーリーのラスト。なのに、私前半で思い出しちゃったんだけど。コレ、どうしたら良い?記憶が戻ったことカミングアウトしたほうがいい?それとも、映画のストーリーを再現したほうがいい?…後者の場合は私にかなりの演技力が求められますが?
いや、無理だろ。ここは素直になろうよ。
「先ほど、子供達のことを呼んでいましたが、僕はまだでしたよね?是非呼んで下さい。」
あ、沖矢さん呼びに直すチャンスかも!記憶なければ苗字呼びで良いじゃん!記憶喪失万歳!
「沖矢さん。」
「はい。ですが、あなたは僕のことを昴と名前で呼んでいましたので、できれば名前で呼んでください。その方が何か思い出すかもしれませんし。」
そう簡単な話でもなかったよ。名前呼びをご希望されています。全力でお断りしたい。
「な!赤井!あなたいつの間に!!」
「赤井?誰ですか?」
「くっ、なまえ!こいつはあなたにちょっかいを出す不届き者です。関わらなくていいんですよ!」
ナイス!安室さん!!ちょっかいはあなたもですが、今は甘えさせてもらいます!
「名前で呼んでいたのは事実ですから、記憶が戻ったら呼んで下さいね。」
「は、はぁ。」
ど、どうしよう。昴さんの笑顔に何も言えなくなってる!!その顔は反則だよ!?顔だけは好みだからね!!顔だけは!!
初めに本当のことを言いそびれると、タイミングがわからなくなるんだけど!?って言うか、安室さんと昴さんが言い争いを始めたんだけど!?ここ、病室だけど!?私、病人だけど!?もう治ったけどな!!!
俯きながらこれからの事を考えるが、どうしたものか、良い案は一切思い浮かばなかった。