マーブル《シーズン3》

□怖い
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頭を抱えた私をみんなが心配した。記憶喪失者が頭抱えちゃダメだった。



「なまえ?大丈夫ですか?」
「ごめんなさい。ちょっと疲れちゃったみたいです。」
「無理もないです。少し休んでください。」
「そう、します。ごめんなさい。」
「謝らないでください。さぁ、横になって。」



安室さんが優しい。きっと彼のことだから事件に関わるきっかけを作っちゃったことや記憶をなくしたことの責任を感じてるんだろうな。安室さん何も悪くないのに。むしろ私の方が…。



このまま記憶喪失のフリをして私の知ってるストーリーを完遂するか、記憶を取り戻したことを話し犯人を逮捕してもらうか。



後者の場合、早期事件解決で何の問題もないように思えるが、実のところすごく怖い。



犯人がすぐに逮捕されれば問題ないが、もし、取り逃がした場合、誰かが怪我をしたり命を狙われたりしたら、死んじゃったりしたら…。



「怖い。」



怖い。自分が傷つくのも、誰かが傷つくのも、私のせいで、また、誰かが死んだらと思うと、怖くてたまらない。



「大丈夫ですよ。そばにいます。だから安心して休んでください。」
「安室さん。どこにもいかないでください。」



私がベッドに横になり、安室さんが私の手を握ってくれる。それを見た蘭ちゃんたちは来たばかりだけど帰っていった。蘭ちゃんと園子ちゃんが「あの二人すごく良い雰囲気だったね。」「なまえさんが素直に甘えてるところ初めて見たわ。やっぱり記憶がないのは本当ね。」などと話しているのが聞こえたが、全力で聞こえなかったことにする。



「少々妬けますね。」
「まだ居たんですか?なまえは疲れているんです。休ませたいので帰ってください。」
「なまえさんに一つだけ忠告を。」
「忠告?」
「ええ、あなたは記憶がない。当然僕や彼のことも。彼があなたとの関係をなんと言ったか大体の想像はつきますが、それを鵜呑みにしない方がいい。」
「おい!なまえを混乱させるようなことを言うな!」
「ホー、混乱ですか?嘘をついていることを否定しないんですね?」
「病院で言い争うつもりはない!とっとと帰れ!」
「なまえさん。彼の言うことが信用できなくなったらいつでも僕を頼ってください。」



嵐が去って静かになったとたん、緊張の糸が切れたのか、私はすぐに目を閉じた。
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