チビー's(長編)
□笑っていてほしい
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赤井side
彼女は薬を飲んで寝ている。オピオイドの副作用もあるようだが、もしかしたら痛みで夜に寝れていないのかもしれない。
しかし、これでいくつか納得がいった。
仕事を辞めたのは、職場に迷惑をかけないようにするため。
食事の量が少ないのは癌の場所、もしくは痛みが原因だろう。
先日、俺たちを留守番させ出かけたのは病院に行くため。薬の処方日がその日になっていた。
薬の入った袋には病院名と担当医の名前が書かれていた。恐らくはナマエが書いたものと思われる。もしもの時のために書いたのだろう。
連絡するべきか。
「僕は、彼女が辛そうにしていたのを一度も見てはいません。赤井はどうですか?」
「………見てないな。」
オピオイドを処方され自宅に帰って来ているという事は、在宅緩和なのだろう。彼女の家族は知っているのか?余命は、あとどれくらいなのだろう。
「僕、以前、見ちゃったんですけど、29年前にコインロッカーに置き去りにされた赤ん坊の新聞記事を切り貼りしているノートがあったんです。」
「ナマエに家族はいない。ということか?」
「わかりません。本人には聞いていないので。」
その話が本当なら………一人で苦痛に耐え、一人で死んで行くつもりだったのか?
突如降って湧いた俺たちには本当のことなど言えないか。
俺たちはそれほど信用はされていなかった。ということか。