短編

□違うんです!
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最近、駅前にできたケーキ屋さんが美味しいと聞いて、ミーハー全開で買いに来た。ショーケースに並べられているケーキはどれもこれも美味しそうでどれを買うか悩む。



「チーズもいいけど、モンブランも捨てがたい。フルーツタルトも美味しそう。あ〜、悩む!」



この悩んでいる時間さえも至福の時である。ショーケースをジッと見つめて数分悩んでいたところで後ろから声をかけられた。



「ナマエ?こんなところで何をしている?」



声の主はFBI捜査官の赤井秀一だった。



「赤井さん?奇遇ですね。まさかケーキ屋さんでお会いするとは思ってもいませんでした。」
「たまたま通りかかっただけだ。で?何をしている?」
「何って、ケーキ屋さんに来てすることって言ったら、ケーキを選んでたんですよ!」
「…そうか。決まったのか?」
「それが、どれもこれも美味しそうで悩んでいるんです。」
「ほー。ちなみに幾つか候補は絞れているのか?」
「はい。チーズケーキとモンブランとフルーツタルトで悩んでます。」
「なら、それを頂こう。」
「へ?あ、ちょっと!」



私の制止も聞かずに、店員さんはチーズケーキとモンブランとフルーツタルトを箱に詰め、赤井秀一はスマートに会計を済ませる。



え?なに?私に太れと!?新手のイジメ!?



「何か勘違いしているようだから言っておくが、イジメじゃ無いぞ。」
「なら、なんで?」
「今日は早く帰れそうだからな。」
「………それで?」
「二人で食べれば良いだろう?」
「………誰と誰で?」
「俺とお前で。」
「………なんで?」
「悩んでいたんだろう?なら、二人で分けたらいいと思ったんだが。違ったか?」
「いや、うん。違わないけど。」
「そうか。仕事が終わったら連絡する。」
「あ!ちょっと!!」



いや、待って!?色々すれ違ってるよ!!店員さんの生暖かい目が居た堪れない!違うんです!!根本的なことが間違ってるんです!!
彼氏面してますけど、私、あの人と付き合ってませんから!!!
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