マーブル《シーズン3》

□今日一番の思い出
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「いーやーだー!やっぱり出場取り消す!!!」
「今さら何言ってるの!そんなワガママが許されるとでも!!」



元々あんたのワガママだろー!私はアフロディーテ号の処女航海に興味ないわー!!



「グダグダ言わないで時間厳守!!さっさと着替えてこい!!」



ギャーギャー喚きながら控え室に押し込まれた。理不尽だ!なんで私がこんな目に…。



ミスコンの審査項目の中に水着着用で自己紹介っていうのがある。白のビキニが目の前にある。



私にこれを着ろと?この貧相な体にビキニが似合うわけないだろう?もうやだ、帰りたい。



すでに着替え終わった出場者さんたちのナイスバディなこと。私はそれを間近で見れたことに感謝しかないけど、同じものを自分が着るとなったら話は別だ。あぁ、帰りたい。



刻々と時間が迫ってくる。これ着てみんなの前に出るとか嫌だけど、本気で嫌だけど、2週間の苦労がこの水着一枚でなかったことにするのはもっと嫌だ。



女は度胸だー!周りがみんなナイスバディなら私のことなんか誰も見てないだろうよ!!



時間ギリギリで着替えてやりましたよ!メイクバッチリよ!………だから!さっさと終わらせてくれー!!!今なら羞恥で死ねる気がする!!



ドキドキと心臓が早鐘を打つ中、舞台袖から出場者が並んで壇上に上がる。ギャラリーをじゃがいもだと思いながらウォーキングレッスンで習得した優雅な歩き方を披露する。踵8センチのピンヒールフザケンナ。と思いながらも常に笑顔。



ここは畑。じゃがいも畑。北海道の大自然が作り出す美味しいじゃが…………なんでじゃがいも畑に高級食材が!?



一際目立つ高級食材、例えるなら松茸、いや、金箔か!いっそ松茸が金箔を纏ってる!?


イケメンが輝かしいオーラを放ちながらギャラリーにいるんですけど!?笑顔で手を振ってますけど!?それ、私にですか!?イヤ、きっとチガウ。私じゃない誰かだ。そうであってほしい。…でも、さっきからずっとこっち見てんだよね。チラチラ目が合うんだよね。目が合うたびに微笑むのやめてください。



……ねぇ、沖矢さん?



本当に勘弁してくれ。



まだ始まったばかりで逃げ出したくなりました。
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