マーブル《シーズン3》

□ヒステリー
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安室side




「下手をしたら貴女は殺されていたかもしれないんですよ!?それに他の入園客にも被害があったかもしれない!…聞いてるんですか!?」
「少し落ち着いてください。彼女を責めるのは間違って「…てる。」…?」
「そんなのわかってる!!私だって死にたくないし怖かった!!撃たれた時すごく痛かった!!」
「なら何故!」
「怪我なんてして欲しくなかった!私を庇って、安室さんが怪我したり、死んじゃう方が嫌だった!!」
「!」
「私は安室さんのように強くもないし、守るべき使命も正義感もない。だけど、大切な人が傷つくのは見たくなかった!他の誰を犠牲にしてでも、私は、私に関わる人たちが、私のせいで怪我をしたり死んでしまうのは、もう嫌だったんです!」
「それは………」



組織に殺されたFBI捜査官のことですか?と、口から出そうになったが、ここには沖矢昴がいるので、何とか飲み込んだ。カークは世間的には事故死だ。



それよりも、なまえが泣きながら感情をここまで晒すのは初めてのことかもしれない。彼女の秘密を暴くなら今だろう。でも、本当に良いのか?



「私を好きだというなら、私の前で怪我をしないで!お願いだから、死なないで。」



両手で顔を隠して泣き出したなまえにかける言葉がなかった。彼女は一般人だ。痛みや死に対して人並みの恐怖心を持っていて当然だった。



組織のことや俺たちの事情を知っているから、彼女は強い人なのだと思い込んでいた。でもそれは違った。彼女は必死に虚勢を張って恐怖心から逃げずに立ち向かっていのだ。



「帰ってください。」
「なまえ、」
「帰って!二人とも今日は帰ってください!」



ポロポロと大粒の涙を流しながら僕を睨む目を見て言葉をなくした。これ以上ここに残ればなまえを傷つけてしまう。そうなる前に僕は家を出た。



アパートの階段を降りている時、沖矢昴に声をかけられた。



「あなたが羨ましいです。」
「嫌味ですか?」
「いえいえ、本心です。あれ程までなまえさんに想われているのですから。少し妬きました。」



想われている?俺が?嫌われたの間違いだろう?



「気づいていないなら好都合ですよ。」



好き勝手言って沖矢昴は「では。」と帰って行った。



「クソッ」



事件は解決したのに、心の中にはシコリが残った。
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