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□地獄の日々
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「松田さん!大好きです!」
「おー、サンキュー。」
「もうっ!私は本気ですよ!!」
「そうかそうか。仕事戻れよ?」

松田さんはそう言って私の頭をポンポンと撫でてから喫煙ブースに入って行ってしまった。出来ることなら私も松田さんと一緒にカッコよくタバコを吸いたいけど……無理だった。松田さんのタバコの火をお裾分けしてもらいたいと言う夢もあったが、私には少し、ほんの少しハードルが高かったのだ。

タバコ苦い。

私は所謂子供舌と言うやつで、コーヒーは砂糖もミルクも入れないと飲めないし、カレーは甘口、お寿司はサビ抜きじゃないと食べられない。そんな私がタバコなんて吸えるはずもなかったのだ。

だからタバコにチャレンジした時、本当に死ぬかと思った。

ただ煙たいだけならまだしもとても苦かった。しかもその苦味は口の中、と言うか喉の奥に張り付いてしまったかのようになかなか取れない。何度うがいしても取れなくて、持っていたのど飴なめたら、ミントが余計に苦味を強調したものだからあの時はミント味ののど飴を買ってしまった自分を心底恨んだ。

曇りガラスで中が見えない喫煙ブース。何で普通のガラスにしなかったのよ!松田さんがタバコ吸う姿が見れないじゃない!!と、どうでも良いことを考えながら仕事に戻ることにした。

交通課に戻れば、宮本由美と三池苗子が見回りから帰ってきたところだった。

「今日も玉砕?毎日飽きないわね。」
「それだけ私の愛が本物なの!!」
「清々しいまでに言い切ったけど、その愛重いわー。」
「嘘!?」

毎日アタックしてればさすがに重いと言うよりはウザいになるだろうが、なかなかどうして松田さんには本気にとられてない節がある。まるで妹扱いなのだ。

たしかに子供舌で私服も少し幼い、と言うよりはシンプルだし、色気なんて皆無だけど。これでもちゃんと成人女性なのに!!

「作戦変更した方が良いんじゃない?」
「私別に作戦があって毎日アタックしてるわけじゃないけど?」
頭にはてなマークをつけながら首をかしげると、そこかしこで小さく『うっ!』と呻く声がした。
「名前、黙ってればちゃんと可愛いんだからさ。ここは必殺『押してダメなら引いてみろ!』作戦よ!!」
「え!?そ、それって、松田さんを見かけても声かけちゃダメってこと!?」
「そうよ!」
「私に死ねと!?」
「あんた、毎日告白しないと死ぬの?」
「そうじゃないけど……」
「じゃぁ決まりね!たった今から松田くんには声かけちゃダメだからね!」
「い、今からぁ!?」

そうして名前の地獄の日々は始まったのだった。
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