マーブル《シーズン3》

□逆行性健忘症
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「アメリカの首都は?」
「ワシントン」
「6×7は?」
「42」
「このボールペンの芯を出して見てください。」



カチ



診療科の風戸先生が診察し、先生の部屋で僕とコナン君と目暮警部が診察結果を聞いていた。



「逆行性健忘症ですね。いわゆる記憶喪失です。精神的ショックや強いストレスで一時的に記憶をなくしています。」
「治るんですか?」
「何とも言えませんが、なまえさんの場合は生活に支障がないレベルですので、ふとした時に思い出す出す場合もあると思います。」
「そう言えば、あなたはなまえさんとはどう言った関係ですか?」
「恋人です。」



安室透は迷うことなく恋人だと言い切った。曖昧な関係では診察結果も直接聞くことができなくなってしまう恐れがあったからだ。



「状況が状況なのでご家族に連絡を取った方がいいと思うのですが。」
「今、彼女の両親を呼んでも、両親のことを覚えていないんですよね?」
「恐らくは」
「なら、もう少し待ってください。周りは自分を知っていて自分は知らないと言うのは、彼女のストレスになる可能性もありますから。」
「否定はしませんが。では、ご両親への連絡のタイミングはお任せしても良いですか?」
「はい。」
「その場合。彼女は退院後どうしますか?」
「僕と一緒に帰ります。」
「わかりました。でも、もう少し入院して様子を見てからにしましょう。」



彼女の両親を呼ぶのは当然のことだが、彼女の記憶が戻るまで一緒に暮らすのもありだ。決して下心があったわけではない。



しかし、医師が言うには一時的な記憶障害。自分の名前さえも覚えてないとは。世良真澄が撃たれても応急処置をした彼女が、撃たれた佐藤刑事を見て記憶をなくすほどのショックを受けるだろうか?



病室に戻るとなまえの姿がなく驚いたが、看護婦に聞くと、お見舞いに来た子供が外の空気を吸った方がいいと、中庭に連れていったそうだ。



居場所がわかれば心配もないが、一言声をかけてくれればよかったのに。



「そう言えばコナン君。蘭さんはどうだい?犯人を見てはなかったのかい?」
「それが、蘭ねーちゃん。停電してすぐなまえさんに突き飛ばされたって。」
「突き飛ばした?」
「うん。それで犯人から死角に入って無事だったんだけど。その代わり犯人も見てなかったんだ。」



蘭さんが無事だった理由がわかった。でもどうしてそんな行動をとったのか。一つ謎を解き、また一つ謎が出て来た。
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