月の王子様

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自分でもどうかしていると思う。連日勤務で疲れていたにもかかわらず、月が綺麗だと言う理由で公園でお酒飲んで、酔っ払って、男の人を持ち帰ったなんて。しかも、その男性の正体もわかんなくて宿題にされてしまった。



多分、酔っ払っていた時に名前や職業を聞いたんだろうけど、全く覚えてないんだよ。



手がかりが全然なくて一晩の思い出として処理しても良かったんだけど、あの綺麗な顔が忘れられない。出来ることならもう一度会いたい。



バカな女だと笑ってくれて構わない。それでも私は、あの日立ち寄った公園に毎晩訪れるようになっていた。



「はー。今日も会えなかったか。」



仕事帰りにこの公園に立ち寄ること今日で3日目。時間帯が悪いのか、それとももっと別の要因か。あの人には会えなかった。ここで会ったのだから手がかりくらいはありそうなものだが、全くない。思い出す兆しもない。



会えないとなるとますます気になる。彼の人はどこの誰だったんだろう?………まさか、妻子持ち!?いや、左手には指輪はなかったし、まだ若そうだったよ…ね?



「あー、本当にもう。手がかりがなさすぎる!!」



誰もいない公園では独り言もいつもより大きく聞こえる。溜め息吐いて空を見上げれば、星も月も見えなかった。あの時と違うのは月が出てないことくらいだよ。



まさか、月の王子様、とか?………いやいや、いくら綺麗な顔してても王子様はないわー。



自分の頭のおかしさにがっくりと肩を落として、自宅に帰っていった。



コンビニで買って来た夕飯を食べながら数少ない情報を整理する。



彼は私の名前を知っていた。おそらく酔っ払っている時に自分のことをペラペラ話してしまったのかもしれない。でも、私、本来警戒心が強くて人見知りする方なんだ。いくら酔っ払っていたからって自分の名前や家を知らない男の人に教えるかな?記憶ないから自信ないけど。



あと、彼は“会いに来て”と言っていた。接客業でもしているのかな?綺麗な顔してたからホスト、とか?………夜の街が似合うな。



え?マジで!?



暫く考えたが、ホストだったら帰りの時間に会うこともないだろうという結論に至った。ホストならその時間は接客中だろう。うーん、また振り出しに戻ってしまった。
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