月の王子様

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今夜は月が綺麗だった。スーパームーン、とまではいかないが、大きくて綺麗な満月が公園を明るく照らしている。



ほんの少し期待して、公園に入っていく。公園の中央、少し開けている場所に先客がいた。細身の長身で、少し長い前髪を書き上げながらタバコを咥え月を眺める男の人。



間違いなく、探していたあの人だった。



やっと会えたと思ったものの、声をかけることも忘れ見惚れてしまった。本当に月の王子様だったのかと疑いたくなるほどとても綺麗で様になっていた。



「綺麗…。」
「ん?」



思わず口から出てしまった言葉に彼は反応した。とても小さな声だったと思ったが、静かな公園ではその呟きさえもよく通った。



「あ、あの。」
「久しぶりたねぇ。名前ちゃん。」



彼はタバコを携帯灰皿で消してからこちらに近づいて来た。



今日で4日目、彼のことを考えなかった日はない。やっと会えたと喜びで感覚が麻痺してあるのか、胸がドキドキする。



すぐそばまでやって来た彼を見上げる。思っていたより身長が高い。



「俺の名前、思い出した?」
「…ご、ごめんなさい。」
「責めてるわけじゃないよ?でも、俺のこと考えててくれた?」
「それは………。」



急に恥ずかしさが増して俯いてしまった。顔上げられない。



「俺はずっと考えてたよ。同僚に気持ち悪いって言われるくらい。」



それは、喜んでいいのかな?ドン引きしたらいいのかな?もう、頭の中がぐちゃぐちゃで思考が定まらない。



「えーと。…やっは俺、気持ち悪い?」
「いや、違っ…その。」



私も同類でなので気持ち悪いとは思わないが、リアクションに困っただけ。今も困ってる。
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