月の王子様

□3
1ページ/1ページ

何話したら良いかわかんなかった。何も言えなかった。名前も聞けなかった。何しに公園に行っていたのか、不甲斐ない自分自信に猛反省中です。



手の中にある紙には英数字が並んでいる。メアドだ。私から連絡しなくてはいけないらしい。これを渡したと言うことは、もう公園に行っても会えないってことかな?



誰かに相談したいが、相談すれば自分の失態も話さなければならない。これは非常に困った。とりあえず、もらったアドレスを登録する。名前は【月の王子様】だ。無数にある星ではなく、たった一つしかない月。競争率高そうだな。………ん?競争率??誰と競うの??何を競うの??



彼のことを考えると頭がパニックになる。会うと胸がドキドキとする。これはなんの病気??



うわー。私どうしちゃったんだろう!?



リビングでゴロゴロと転がる。誰にも注意されることもなく、一人で住むには広いリビングで、仰向けに寝転がる。一人に慣れている。誰にも気兼ねなく過ごすことに慣れている。趣味は読書と散歩。特技は編み物。内向的なインドア派。必死に生きることもなく、死に急ぐこともない。ボンヤリと日々を過ごしている。それが私だ。こんなドキドキしたことない。どうしたら良いんだろう。



リビングに飾られている家族写真が私を見ていた。父と母が今の私を見たらなんて言うだろう。そう思ったら落ち着いてきた。



「洗濯でもしようかな。」



紙をポケットに入れて1週間溜まった洗濯物に手を伸ばした。







〜警視庁〜


「萩原、気持ち悪い。」



5分に一度携帯を見てはため息をつく同僚を見て、松田は問答無用で切り捨てた。



「そりゃ無いぜ!松田ぁ。傷心中の俺のこと労ってくれても良いだろう?」



何が傷心中だ。昨日の夜、例の女に連絡先を渡してからまだ連絡がないって落ち込んでいるやつにどう声をかけろというのか。相手の女にも都合があるだろうに。



ピー



萩原と松田がじゃれ合っている時、警視庁内に一枚のファックスが届いた。数年前から数字が届けられ、毎年その数字が一つずつ減っていき、去年が1だったので今年何かが起こるのではと警戒していた。ファックス内容は……。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ