月の王子様
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その後はどうなったのか全然覚えてない。現場は急に慌ただしく動き出してサングラスの人もどこかに駆け出していってしまった。
私は声一つ出すこともできずにその場に立ち尽くした。
どれくらいそうしていたかわからないけど、気がついたら私は家に帰って来ていた。
つけっぱなしになっていたテレビからは今日の事件が流れていて、機動隊員数名が犠牲になったとキャスターが言っていた。
それはあの人のことなの?違うよね?きっと無事だよね?多少は怪我もしたかも知らないけど、生きてるよね?
震える手で携帯を操作しメールを作成する。送信先は【月の王子様】だ。
to.月の王子様
題名 :
あなたのことを思い出し出しました
件名 :
あなたを信じています。
返信待ってます。
名前
すぐに返信があるはずだ。きっと無事なんだから。
信じている。けれど、メールの返信は半年待っても返ってこなかった。
あれから一年が経った。
同僚ありで戦友であり親友だったあいつは、まだ目覚めない。
あの日、起爆装置が突然6秒前からカウントダウンし、現場にいた機動隊員数名が犠牲になった。辛うじて生きていたやつもいたが、病院に搬送され息を引き取った。こいつ以外は全員死んだ。
萩原も発見当初生きているのが奇跡としか言いようがなかった。皮膚は焼け骨は砕け頭部も損傷。誰もが死んでいると思っていたし、助からないだろうと思っていた。けれどこいつの生命力は強かった。この世に未練でもあるのか、今も辛うじて生きている。
「おい。いつまで寝てんだよ、さっさと起きろよ。」
俺の声にも反応しないこいつはもう一生目覚めないのかもしれない。俺は親友を一人失ったも同然だった。