祝!50万人突破記念!!

□勘弁してくれ
1ページ/1ページ

工藤邸リビングで、変装を解いた赤井秀一は、目の前の光景にどう対処するべきか、本気で悩んでいた。


「あ〜!赤井しゃんら〜!ひしゃしぶりれす!」


顔は赤く、目はトロリとしていて、舌も回っていない。………名前は完全に酔っ払っていた。


阿笠博士の家から出て来た名前を捕獲し工藤邸に連れ込み酒を勧めた。この一文だけでは俺が悪役のようだが、決して下心があったわけではない。………多少否定できんが。


しかし、酒を飲ませたのは話が聞き出しやすいようにだ。決して酔わせようと想ったわけではない。いつも通りにバーボンの水割り(1:9)のほぼ水の状態で飲ませていた。


名前から『私から情報を聞き出したいなら変装解いて赤井さんになってくれなきゃ嫌です!』などと可愛らしいお願いをされたら断ることもできず、少し目を離した隙に水割りどころかロックでバーボンを飲んでしまい、この状態の出来上がり。という事らしい。


名前が持っていたグラスを取り上げると、取り返そうと俺に近づく。身長差から自動的に上目遣いで胸をぴったりと俺に押し付け、グラスを奪い返そうとする。……なんの拷問だ?


「返してくらさい!」
「これ以上は駄目だ。」
「誘ったのは赤井しゃんれすよ!」


今現在誘惑されているのは俺の方だが。


「むぅ。いいれすよ。あたらしぃの作りゅから!」


俺が使っていたグラスにドボドボとバーボンを注いでグイッとグラスを傾ける。随分と男らしい飲みっぷりに呆気にとられたが、そんな飲み方をしていたら急性アルコール中毒になってしまう。


「辞めるんだ。」


再びグラスを取り上げると名前はタックルするように俺に飛びついてきた。咄嗟のことに尻餅をついた俺の上に跨り、両頬をガシッと固定され、トロンとした目で俺を見つめる。酒のせいで色香が増した名前に抵抗することを忘れた俺に、名前は自分の唇を俺の唇に重ねた。


両手にグラスを持っていて押し返すこともできず、なすがままの俺に名前はさっき口に含んだバーボンを俺に口移ししてきた。


「!?」


口移しなどしたことないのだろう。それどころかキスだって未経験かもしれない名前が慣れないことをしたものだから、俺の口の中に一気に流し込まれたバーボンにむせそうになった。


何とか堪えて口の中のバーボンを飲み込んだが少し溢れてしまった。そのバーボンを名前はペロリと舐めとる。


俺の身体中の熱が一箇所に集まるのがわかる。でも、名前は酔っ払いだ。ここに理性も常識も愛情さえもないなら、この行為に何の意味もない。そう自分に言い聞かせた。


「赤井しゃん、可愛い。」


無抵抗でなすがままの俺を見てその感想か。やってくれる。


俺に跨り胸に手をついてゆっくりと俺に凭れかかる名前。俺の胸に頬を寄せうっとりと目を瞑る、と。次に聞こえてきたのは規則正しい寝息だった。


勘弁してくれ。


好意を寄せている女にここまで翻弄されたのは初めてのことだ。今までの自分ならここまで誘われれば手を出していたに違いない。でも、本気で惚れた女だから自制する。


だが、名前の気持ちを手に入れた時には、この借りは倍にして返してろう。覚えていろよ。


酔っ払いに記憶など残っている可能性は低いのだが、それでも自分は忘れまいと企み、名前をベッドに運んだ。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ