月と星の物語

□夜の戯れ
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「ふぁ〜…、今日も疲れたなぁ…」


私は審神者業務を終えお風呂に入り一息ついていた。
机に向かう作業がどうも好きになれない。
でも、そんなことも言ってられないんだよなぁ…。
机の上に広げてある書類を見て大きな溜息を吐く。
寝る前に一仕事終わらせてしまおう。
そう思い私は机に向かった。
それと同時に障子の縁をコツコツと鳴らす音がした。


「はぁーい、どうぞー」


私は背中を向けたまま返事をする。
すると、すっと障子が開く音がした
静かに音の主が入ってくる。
近くに寄ってきた気配がした。
だが、一向に声が聞こえない。
私は持っていた筆を置いて振り返った。
そこには、寝間着姿の清光が立っていた。


「清光?どうしたの?」


彼は立ったまま何も話さない。
しゅんと寂しそうな悲しそうなそんな顔をしている。
安定と喧嘩をした?
それとも、どこか具合でも悪いのだろうか?
私は彼の手を引いて私の前に座らせた。


「何か嫌なことでもあった?」
「主、俺の事嫌いになった…?」
「え?どうして?」
「昼間…」


あぁ、怒られたのを気にしていたのか。
元々は私が悪いのになんだか申し訳ない。
私は彼の頭を撫でた。


「ちゃんと反省してくれたならそれでいいの。嫌いになんてならないよ」


そう言うと、彼は少し顔を上げて私を見た。
ちょっと上目遣いで。


「本当…?俺のこと好き…?愛してくれる…?」
「うん」
「声に出して…」
「えっ…、えっと…」


私は急に恥ずかしくなり少し俯いた。
顔に熱が集中する。
そんな私の頬に彼の手が伸びてきて優しく触れた。


「言って…?」


甘えるような声。
私はこの声に弱い。
そんな声で言われてしまったら言うしかないじゃないか。


「す、好き…だよ…?」
「…かわいい」
「わっ!」


清光は勢いよく私に抱きついた。
そしてぐりぐりと私の肩に顔を埋める。
髪の毛が耳に当たって擽ったい。


「くすぐったいよ…」
「やだ、離れたくない」


すっかり甘えん坊モードだ。
もう、しょうがないな。
私は彼の背中に手を回しぽんぽんと優しく叩く。
すると清光は抱き締めている腕の力を強めた。


「あれ?シャンプー変えた?」
「え?うん、何か売り切れちゃったみたいで」
「ふぅん」


彼は首筋に顔を埋めたまますんすんと匂いを嗅いでいる。
そこに当たる息がくすぐったくて、私は身を固くした。
清光を意識しないように…。
違うことを考えよう。
内心そんなことを考えていると首筋にぬるっとした感覚があって、油断をしていた私は突然のことに思わず声を出してしまった。


「ひゃっ!」


彼の体が離れたかと思うとにやりと悪い笑みを浮かべていた。
私の中の何かがやばいと言っている。
早く彼をこの部屋から出さなければ。


「も、もう遅いから、清光部屋に帰ってやす……きゃっ!」


ぐるりと視界が反転した。
閉じていた目を開けると、いつの間にか彼の下になっていた。


「あんな声を聞いたら帰れるわけないよね」
「あれはっ…!清光のせいじゃない!」
「据え膳食わぬは男の恥ってね。それじゃ、いただきます」


男の力に勝てるはずがなくて。
私の抵抗も空しく、簡単に唇を奪われた。
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