Short Novel

□・幸せを感じる瞬間
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キッチンから聞こえてくるのは
野菜かなにかを刻むトントンという音
鍋でなにかが煮えるグツグツという音
そして彼女の歌声


ただそれだけのことなのに、なんだか急に
愛しく思えてきて・・・



彼女のお腹に手を回し、抱き締める


「義人くん?料理中は危ないからあとでね?」



なんてやんわりと怒られる
だけど・・・



「・・・君が可愛すぎるのが悪い」


そんな俺を見て、クスッと笑う君

「ふふっ・・・義人くん子供みたいで可愛い」


そんな君の一言で耳まで真っ赤になった俺

照れ隠しに君の項にキスをする


「ひゃっ・・・」

首の弱い美季ちゃんはこれだけで十分感じる


「・・・子供はこんなことしない」


拗ねぎみに耳元で囁けば、顔どころか、
耳や首筋まで真っ赤にして



「もうっ!義人くん!」



頬を膨らませて怒る



だけど、今は君が怒る姿さえも可愛くて・・・
こんな日常の些細なことさえ、
俺には幸せでしかない



「・・・幸せだな」

「え?なにか言った?」

「・・・君の傍にいられて幸せっていった」


自分で言ったくせに、恥ずかしくなって
美季ちゃんの肩に顔を埋めた



「私も、だよ・・・」



美季ちゃんも恥ずかしそうに呟く



「こんなちょっとしたことでも、嬉しく
思えるの・・・義人くんが傍にいてくれるだけで私は幸せになれるよ」


美季ちゃんも俺と同じことを考えていた

俺には君さえいてくれれば、幸せでいられる

そのことが嬉しくて、いつの間にか抱き締める腕の力を強めていた



「義人くん・・・苦しいよ・・・」

「あ・・・ごめん・・・」



パッと腕の力を緩めた
そしたら、美季ちゃんの方から
抱きついてくれて・・・


「あのね・・・大好き、だよ・・・」

「・・・っ!」


それだけで俺は嬉しすぎて舞い上がる
それと同時に美季ちゃんが欲しくなる


鍋の火を止め、美季ちゃんを横抱きにして、
そのまま寝室へーー・・・



「えっ・・・ちょっと、まって・・・っ!」

「待たない。それに誘ったのは君の方だから」



こうなったら最後、抵抗しても無駄だと
わかっているから、俺の腕の中で
おとなしくなる



結局この時間が2人で過ごす一番幸せな時間なんだと思う


.
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