その他[SS]

□引き込むなや、綺麗なお前
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「小春、俺な、最近誰かにつけられとる気がするねん」

練習後の部室で、一氏ユウジは真剣な表情で金色小春の目を見つめた。小春は頬に手を添え、「あら〜」と声を漏らした。

「ユウくん顔は綺麗やし、追っかけさんやないやろか?」
「うーん...なんかストーカーっぽくて気色悪いんよ」

実際、帰り道を歩いていると自分の後ろから足音がし、立ち止まり振り返ると途端にいなくなる影。また歩き出すと後ろからも足音が聞こえるという始末。
疲れからくる幻聴かもしれないが、毎日小春と会える幸せな学校生活を送っている俺に、今は疲れなど無い筈なのに。

「あーー!!もう、ほんま気色悪いなぁ。小春ぅ、俺掘られたらどないしよぉ...」
「今どき中学生を襲うやつはいないわよ。ほら、今日も暗くなるし帰りましょ」
「うん...」

小春に背中を押されて部室から出ると、ふと部室の方から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「なんや白石」

白石は困ったような顔で俺の顔を覗き込み、やがて口が動いた。

「さっきの話聞こえてもうたんやけど...大丈夫か?」
「まぁいざとなったら警察呼ぶから...」
「そうか、まぁ気をつけて帰ってな」

おう、とぶっきらぼうに返事を返す。小春に「んもぅ、愛想悪いわぁ」と言われたが仕方がない。正直、俺は白石は苦手や。あいつは笑いをわかってへんし、俺がモノマネを披露しとってもあいつが通ると女子は白石の方へ駆け寄ってしまう。

(悪いヤツやないけど、なんか気に入らんわ...)
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