その他[SS]

□初めての快楽
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手塚国光は、性に関しては酷く疎かった。
 中学2年生にして、自慰は愚か射精や勃起も経験したことの無い廉潔っぷりだ。
 
 そこまで異性に興味が無いので、性的なことに触れる機会も無かったのだ。
 体つきは大人になっていくのに、性と触れ合わぬ体――
 それは、中学2年生の春に爆発して現れることとなった。








 練習時間は終わり、着替え終わった先輩たちはもうゾロゾロと帰っていた。新入部員の1年生も、自主練で残る者もいたが、それは皆、手塚の練習が終わる頃には誰もいなくなっていた。
 空を見上げれば、夕焼けのオレンジと夜の暗い青が混ざり、とても綺麗な景色を作っている。
 だが、そんな美しい空さえ気にならないくらい、今の手塚を支配しているものがあった。
 
 今まで体験した事の無い体の火照りように、自分でもどうすればいいのか分からない。
 ズクンズクンと疼く下半身……。
どうしてもこの状態では、家まで我慢は出来そうにない。
 
 「はあっ……はあっ……」
 
 手塚は電気もつけずに、薄暗い部室の中でただ治まるのを待っていた。
 
 (早く……治まってくれ……)
 
 願ってみたところで、熱は一向に治まらない。耐えるように椅子の上でじっと縮こまっていると、突然開く部室の扉。
 
 (――まだ残っている者がいたのか)
 
 部室へ足を踏み入れた彼は電気をつけ、薄暗い室内で縮こまっていた手塚の姿を見て、ひどく驚いたのかビクッと体を跳ねさせたのを見てしまった。
 
 「っす……、お疲れ様です」
 
 と、クールに挨拶をしてきた彼に「あぁ……」と素っ気なく返してしまった。
 部室に入ってきた者は、新入部員の中でも一目置かれている――海堂薫だった。
 
 そんな彼は、ぎりぎり手塚の視界に入る所で着替えを始めた。
 艶やかな髪、しなやかな筋肉のついた体、うなじを軽く濡らし光る汗……。
 頭に巻いたバンダナを取る手つきや、服に手をかけ脱いでいく仕草も不思議と惹かれるものがあり、無意識に凝視してしまっていた。
 
 「……あの」
 
 着替え終え、制服姿になった海堂は、椅子に座った手塚を上から見ていた。
 
 「鍵、どうすればいいすか」
 
 自分にかけられた彼の、ゾクゾクするほど低い声が耳に心地いい。
 
 「俺が閉めておく。もう帰っていいぞ」
 「……ありがとうございます。でも、今日は学校まで迎えが来てるんで、俺が閉めても、……」
 
 海堂の声が途切れる。彼の鋭い目は、ある部分を見つめていた。
 視線の先を辿ると、自分の股辺りを見ていたのだ。
 
 「……!?」
 
 手塚は思わず眉をひそめた。いつもは静かにしているはずの性器が、張り詰めてズボンを押し上げているのだ。
 
 「……」
 「……」
 
 無言の重い空気が流れ、何だかいたたまれない。海堂も気まずいといった様子で顔を横に向ける。
 
 (何故、俺は勃起をしているんだ)
 
 羞恥のあまり、足が震えて歩けそうにない。ここから出ていきづらくなった海堂は手塚の隣に腰掛け、顔をのぞきこんでくる、
 
 「……ぬ、抜きにいかなくていいんすか?」
 
 と、ボソッと低い声で囁かれる。
 
 「抜きに、とはどういう意味だ」
 「え……、あ……、一度出せば楽になると思うっす……」
 
 一度出せば楽に?
 手塚は、海堂の言った言葉を理解出来ずに、赤い顔で俯いた。
 
 (勃起は性的興奮で起こるものだと授業で習ったが、治め方は習っていない……)
 
 ――ここはもう、勇気を振り絞って訊くしかない
 
 「教えてくれないか、その……出すということを」
 「…………知らないんすか?」
 「恥ずかしいが、全く分からない……」
 「じゃあ、俺が……」
 
 海堂は恐る恐るとした手つきで、手塚の性器をズボンの上から触れる。
 
 「そ、そんな所を……触るのか?」
 「え……、そりゃそうっすよ。下、脱いでください」
 
 後輩に性欲処理をさせるなんて許されない。
 許されないはずなのに、視界に入った忌々しく勃ち上がった雄芯を見ると、どうしても本能のままにズボンと下着を下ろしてしまう。
 
 (こんな、会話をした事も無いような後輩の前で、俺は……)
 
 立派にそそり立った肉棒は、天を目指しているかのように上を向き、見事に反り返っていた。
 
 「これで、どうすればいい……」
 
 羞恥で震えながら訊くと、海堂は手塚の肉棒をそっと握る。
 
 「ふっ……」
 
 初めて直で触られる熱いそこに、手塚は小さく吐息を漏らす。
 海堂の手は肉棒を上下にゆっくりと扱きあげる。時に緩急をつけて刺激されると、その快感に手塚は甲高い声を出しそうになってしまう。
 
 「こうやって、上下に擦ってればいずれ出せますよ」
 
 そう言い、理解したか確認するためか、海堂は手塚の顔を覗き込む。
 練習後で疲れているというのに、手塚の肉棒を一生懸命扱いてくれている彼に、手塚は少しずつ惹かれていった――……。
 
 と言うのも、この異様な状況がもたらす一時的な感情なのかもしれないが……。
 
 「なんだかっ……ゾクゾクするっ……」
 「どうすか?気分の方は」
 「うっ……いい……」
 
 上下される度に、今まで感じたことのない甘い快感が身体中を走り抜ける。
 先端から溢れる蜜が海堂の手を汚し、蜜ごと扱かれれば、クチュクチュと卑猥な水音が部屋に響いた。
 
 「……うぅっ、海堂、そろそろ手を……」
 「イきそうっすか」
 「はあっ……、頼む、手を離してくれ――……!」
 
 目の前が白くなり、下半身の奥で何かが爆発した。最高のエクスタシーが迫って来たかと思いきや、海堂の手に溢れ行く白い粘着質な液体――
 
 (これが……射精……)
 
 余韻に浸りながら肩で息をしていると、海堂は制服のポケットからティッシュを取り出し、自分の手や手塚の肉棒に付着した精液を拭った。
 そのティッシュをゴミ箱に捨て、手塚を横目でチラリと見てから、無言で部室から出て行ってしまった。
 
 (軽蔑されただろうか……)
 
 ドッと襲ってきた脱力感で、手塚はまた暫く動けなかった。
 だが、一度快楽を知ってしまった身体は再び快感を求め、下半身の奥でズクンズクンと疼いていた。
 
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