氷帝中心[SS]
□歪な愛情
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「俺が忍足とダブルスですか?」
榊監督の口から予想もしていなかった言葉が発せられ、俺は驚愕していた。
「そうだ。お前と鳳のダブルスは強い。だが、色々な組み合わせも時には必要……わかるな?」
「は、はぁ」
この話は練習が終わる頃に、再度跡部の口から部員に伝えられたが、やはり長太郎も驚いている様子だった。
長太郎は俺のダブルスのペアだが、密かに付き合ってたりする恋人でもあった。正直、それほど絆もあったのに離されるなんて、と心のどこかでは思っていた。
同じく、忍足にもペア兼恋人の岳人がいる。複雑な気持ちでくすぶっていると、
「宍戸、暫くよろしく頼むわ」
「あ、……おう、よろしくな」
偶然傍にいた忍足に声をかけられ、適当に返事を返すと、忍足は「そうや」と何かを思いついたように、こちらを振り返った。
「宍戸に用事無いんやったら、これから一緒に走らへんか?」
「ん、別にいいけどよ」
突然の申し出をすんなりと受け入れ、みんなが帰り始めている時間に、俺たちは走り出した。
暫く並んで走っていると、俺は尿意をもたらしたのでトイレに行くことにした。
「悪ぃ、俺ちょっと便所」
「俺もついていくわ」
黒に染まっていく空の下……。今思えば、これが始まりだったと思う。
「そろそろ帰っかな……」
用を足し、ズボンを直すと、ふいに後ろに重みを感じた。
「なぁ宍戸」
「何もたれてんだよ」
俺の背中にもたれかかる忍足は、いつもより吐息が多めの声で、耳元で囁く。
「自分、めっちゃ可愛いこと気づいてへんやろ」
「は……?」
警戒心からか、背筋がサッと冷たくなった。囁かれた事に背筋が冷えたのではなく、まるで品定めをするように見てくる忍足の目に。
「な、なんだよ気持ち悪ぃな」
「やっと二人になれたなぁ……宍戸」
忍足の体重をより一層感じる。そして、引き寄せられるように抱きつかれてしまった。
後ろから回ってきた力強い腕のせいで、上手く逃げられない状況だ。
「宍戸……一つええか?」
「いいけどよ、さ、さっきから目がマジで怖ぇよ……」
「鳳、どうなるかわからんで」
、
長太郎?
「おい、長太郎がっ……長太郎が何なんだよ……!」
なんだ?長太郎がなんだって言うんだよ、
額に嫌な汗が滲んできた気がして、今すぐにでも拭いたかったが、抱きつかれているせいで身動きがとれない。
「大丈夫や、宍戸が俺の言うこと聞いてくれるんやったらな」
「まさか金とか言うんじゃねぇだろうな」
「ん、金はいらんわ。今すぐにでも出来ることやけど」
「やるから言ってくれ!長太郎に何かあったら……」
言いかけたところで、忍足に俺の肩を掴まれ、グルっと向きを変えられる。俺の顔は、忍足の顔と急激に近くなった。
「じゃあ宍戸、一発抜いたるわ」
その言葉を理解するのに数秒かかった。何を言ってるんだ、こいつは。
「は、はは……お前の言うことって、…………は?」
「心配せんでも気持ちよくしたるから」
目の前の酔狂な奴は、腰を下ろしたと思えば、なんの躊躇いもなく俺のズボンを下にずらし始めた。
「てめぇ!冗談はよせって…………!」
ズボンを下げ、下着も下げようとする手を阻止したくて、忍足の頭手を掴んで離そうとしたが、向こうは器用なため、その手は簡単に振り払われるばかりだった。
「ただのフェラや……可愛い声で鳴いてや?」
「本当にこれで長太郎は助かるのかよ……」
「宍戸のよがっとる姿は本間可愛ええやろうなぁ……ビデオ撮っとるからいい反応してや」
「ビデオ?なんだよ、この映像を誰かに渡すつもりなのか?……くっそ……くそが……!」
「はいはい」
ズボンも下着も足元までずらされ、下半身を露出しているせいで、羞恥のあまりに目元に涙が溜まってきた。
「泣かんといてや……ほな、いただきます」
忍足は俺の肉棒を掴むと、ソフトクリームでも食べているかのように舌先で刺激する。
「やめっ……」
「これが宍戸の味っ……」
正直、一人で慰める時より断然気持ちよかった。だが、その相手が忍足なんて……。
『宍戸さん』
ふいに愛おしい声が頭に浮かんだ。快感と罪悪感が葛藤し、どうしてこんな事になったのか、何がなんだか分からなくなってきた。
舌先で刺激されていたが、忍足は口に含み始めたので、淫らな音がトイレ中に響き渡り、俺は狂ってしまいそうだった。
「ぁ、やっ……忍足……もう……」
「宍戸……宍戸……」
「ふっ…………」
あああ、長太郎、長太郎。こんな事、長太郎に知られたらどうして生きていこう。こんな事長太郎なら許してくれっかな?
「あ、もう勃ってきたで?気持ちええんか?」
「一つ聞きたいんだけどよっ……、長太郎が何したって言うんだよ……」
するとピタッと忍足の行動は止まった。忍足は薄ら笑いで俺を見ると、
「そんなん、鳳が宍戸と仲良し過ぎるからに決まっとるやろ」
と下卑た顔で答えるのであった。
「は?……で、なんなんだよ」
「宍戸さん宍戸さんって、犬みたいな可愛い後輩に惚れるんはわかる。せやけどな、もっと可愛いお前を独り占めしよう、なんて考えは許せらんわ」
独り占め……?
本当にこいつ頭どうしたんだよ。
「忍足には岳人がいるだろ?なんで俺に構うんだよ」
「宍戸の魅力の方が勝っとったって話やろ」
「俺がお前に抜かれるのを拒否すれば、長太郎をどうするつもりだったんだよ」
「せやなぁ……、ごめんなさいって泣きつくまで犯しとったかもな」
これは、忍足の長太郎に対する嫉妬...
醜い嫉妬... 嫉妬、嫉妬、嫉妬。岳人の事も考えてみろよ…………。
「……長太郎に何もしねぇって言うなら、俺に何しても構わねぇよ……」
「なんや急に」
「抜くでも突っ込むでも何でもしてみろよ」
「ふーん……」
忍足は元の状態に戻った俺の肉棒を再び咥えると、右手でまだ慣らしていない蕾に指を押し当ててきた。
「っ……!?」
「突っ込むでも何でもしてみろよ、やっけ?遠慮なくさせてもらうわ」
指はどんどん中へ侵入して圧迫していく。まず忍足の指が汚れる心配より、人の指が自分の中に入ってくる違和感に悶える他なかった。
「!?はっ……そっ、そこ、ん、んぅうっ……!」
「ここはな、前立腺って言うんや」
咥えられながらも敏感な前立腺を刺激され、膝がガクガクと震えてしまう。
それと同時に、射精感が膨れ上がった来たので、忍足に訴えたかったが、あまりの快感によがる声しか出なくなってしまった。
「あっ、忍足ぃっ……そこもうやめろよぉ……」
「んー?気持ちよさそうやけど?」
「イッ……く、だろうがぁ……。ん、あっ……は、ぁ…………」
「ほら、カメラあっちやで。忘れとったやろ。カメラの方にイキ顔晒しや」
「い、イッ……あぁっ……!」
勢い良く飛び出した白濁は忍足の口内に入り、ゴクンと音がしたので飲み込んだ事が分かる。
「はぁ……はぁぁ……」
「お疲れさん、ほんま可愛ええわ……」
「うるせっ……」
「またこうして欲しかったらいつでも言ってや。鳳を救う方法はこれだけや……堪忍な、宍戸。ええ映像撮れたわ」
それだけ言うと忍足は立ち上がり、トイレを先に出て行った。残ったのは快感の余韻と、僅かな罪悪感だった。