氷帝中心[SS]
□歪な愛情3
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「なぁ侑士、今日も一緒に帰れねーの?」
上目遣いで顔を覗き込んでくる可愛い顔。岳人は期待を込めた表情で見つめてくるが、俺の答えは決まってノーだ。
「……すまんなぁ、今日もあかんわ」
宍戸と鳳と肉体関係を持ってから早くも一ヶ月。お互い日替わりで俺とセックスをしに来るから、岳人と帰ることがあまりできないでいた。
「またかよ……なんだよ、なんかヒミツの会議でもしてんのか?」
「まぁそんな所やねん。堪忍な、岳人」
岳人、と久々に名前を呼ばれ少し照れたのか、そっぽを向く姿は愛らしく感じた。
……宍戸の事を好きになるまでなら。
練習終了後、今日は宍戸とセックスをする日なので部室に残ると、そこには──。
「……岳人、帰らへんのか?」
今この部屋には俺と宍戸と岳人の三人。岳人が帰らないことには行為が出来ない状態でいた。
「侑士、今日は一緒に帰ろうぜ」
「だからあかんて言うたやろ?」
「……今日は、一緒に帰ろうぜ」
「なぁ岳人、人の話……」
「なんなんだよっ!!」
シン、と静まり返る部屋。一度俯いた岳人が顔を上げると、そこには涙で濡れた顔があった。
「なんなんだよっ……!侑士も宍戸も鳳も!!ぜんぶっ……全部知ってたんだからな!!」
気づかれとったんか……。
目の前には泣きじゃくる岳人と、焦り果てた様子の宍戸。
──あかんわ、ここから何も考えてへん。
予想外の展開に、動揺を隠しきれない忍足へ縋るかのように、岳人は忍足に近くと、
「侑士。宍戸と鳳と……俺、一番は誰なんだよ?」
と、問いかけた。
「ここで二人を選ぶんなら、俺はもう諦める……」
せやな、そんなん
「絶対三択だからな……」
決まっとるやろ。
「岳人」
即座に岳人の顔は安心の色に染まった気がした。だが──。
「岳人、お前やない」
「っ……!」
一瞬で絶望に飲み込まれた岳人は、顔を覆いながら部屋を飛び出した。その後、岳人と話すことはなかったと思う。
横にいた宍戸と鳳は流石に気まずすぎたのか、荷物をまとめ、逃げるように俺の前から去った。
その後、親の転勤が決まり、俺は氷帝から消えることになった。