雑記

□「月が綺麗ですね」と言ったから
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【石田三成篇】
 
 
 
 
  
「それがどうした」


夜、一緒に三成様のお部屋に向かう途中、冷たい風に身を震わせ、空を眺めると、雲一つ無い空に、
輝く月が浮かんでいた。

三成様はちらりと、空を見ると興味なさげにゆぶやき、視線を廊下に戻す。


「今日は冷えますかね?」

「当たり前だ。夜、雲がない日は昼間暖められた空気が空へ逃げる。だから、今夜は冷える。」


スタスタと廊下を進む三成様において行かれないよう、空を気にしつつ、廊下を進む。


「わっ!?」


よそ見をしていたため、立ち止まった三成様に気づかずに、三成様の背中に思いっきり顔をぶつけてしまう。


「ちゃんと前を向いて歩け。」


眉間にしわを寄せながら、ふわりと先程まで三成様が来ていた羽織を肩にかけられる。



「馬鹿は風邪引かないと言うが、いくらあんたでも、この寒さで体調を崩されかねん。それでは俺が困る。」


いつもより早口で言い終えた三成様は、再び廊下を進み始める。
寒さのせいか、心なしか三成様の耳が赤い。


「あ、ありがとうございます。」


慌てて追いかけ、そっと手を握ると、三成様はふっと微笑みながら振り返る。


「もたもたしないで、早く部屋へ行くぞ」


そう言いながら、ぎゅっと手を握り返してくださった。





【石田三成篇・終】
 
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