おはなし
□猫のお話/sk
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紫Side
「にゃあ」
少し低めの酷く甘えるような声。
ふと、下を向けばそこには、ふわふわとした毛並みの猫がちょこんと座っている。
ぱっちりと丸い大きな目が、太陽の光を反射し緑色に輝く。
(あ、ちょっとシゲに似てる。)
今日、久々に二人で合うことができる愛しい恋人のことを考えながら、猫の頭を撫でようと手を伸ばす。
随分と人に馴れているようで、伸ばした手にすりよってくる。
にゃあにゃあ鳴くその姿が可愛らしい。
両手でそっと猫を持ち上げると、その、ふわふわとした毛がてに当たってくすぐったい。
そっと足の上に猫を乗せる。頭をしっとり撫でてやれば、気持ち良さそうに喉をゴロゴロ鳴らす。
首輪はしていないけど、どこかの子なのだろうか。
「君はどこの子だい?」
…なんて問いかけても、答えるはずがなく。
そっと下におろしてやると、猫は名残惜しそうにに地面におりた。少し肩を丸まらせ、不機嫌そうにしているのが一目でわかる。
じゃあね、と言って立ち上がると、今度は寂しそうに鳴き始め行く手を阻む。
そんなに可愛いく鳴かれたら、放っておけるわけないじゃないか。
「ふふ、もー、なんなのぉ」
きっとへにゃっとしているであろう顔で語りかければ、猫もまた嬉しそうに答える。
あー……本当に可愛いなぁ…。うちの子にしちゃいたい…。
「うちくる?」
なーんて言ったって、答えるはずないのに。
ふと、今日の約束を思いだして、もう帰らなくちゃと後ろへ振り向く。
「にゃぁ!」
さっきの質問の返事をするように、元気よく響く猫の声。
びっくりしてもう一度猫の方に目をやれば、早くつれていけといわんばかりに、急かすような顔で座っている。
ふはっ、と笑って猫を抱き上げる。
「今日からお前はうちの子だっ」
「にゃ!!」
満足そうに鳴いた猫に、思わず笑みがこぼれる。
名前はなににしよう。首輪はつけようか。
つけるとしたら緑かなぁ、…ふふ。シゲと同じ色。
それじゃあ名前もシゲにしようか。……流石に怒られるかな。
なぁんて。ふわふわしたことを考えながら、軽い足取りで家へと向かう。
新しく家族の仲間入りをした、綺麗な目をした猫をかかえて。
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