短夢
□【獄都事変】頑張れ佐疫
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※ツンデレ頑張れシリーズ
※グロとはまではいかないけど危ないシーン有り
「キリカさん今日もお美しいですね」
「やだ名無しさんちゃんったら」
名無しさんは今恋をしている
相手は目の前で食事の準備をしてくれているキリカさん
優しく美しいまさに理想の女性
「キリカさんのおかげで獄卒を続けていられるんです」
「あら、もっと他の目標を見つけなきゃダメよ?」
「キリカさん、もし1人で寂しくなったらいつでも俺を呼んでくださいね」
「おばちゃんをからかわないの」
からかって無いんだけどなあ……
盛り付けが終わってしまったのでキリカさんから飯を貰ってしょんぼりと席に着く
「あ、手が滑った」
「あっづ!!!!!」
適当な席を選び、腰掛けた瞬間後方から奇襲。火傷寸前の後頭部を抑えて振り向くと佐疫が湯呑み片手に立っていた
「お前完全に湯呑みこっち向けてんじゃねーか確信犯」
「やだなあ本当に手が滑ったんだよ?」
嘘つけ
こいつはやたら俺に攻撃してくる奴で、館内での暴力事件は数え切れないほど
他の獄卒には笑顔で対応する癖に俺には当たりがキツイんだよな……
「それより名無しさん、それ食べたら俺と仕事だって」
「俺、谷裂と他の仕事ある」
「それ斬島が行くから」
その2人を一緒にすると面倒な事になりかねんから俺が選ばれたんだけど
そんな犬猿とこちらの犬猿
最近俺と佐疫の2人仕事も多い気がする
「…その仕事の指示出したの災藤さんか?」
「そうだけど」
そしていつも2人仕事の指示を出すのは災藤さんだ
あの人は俺と佐疫の仲が悪いのを気にしているらしいが、仕事を通じて仲良くなってもらおうとでも考えているのか……?
「ねえ」
「あ?」
「早く食べなよ鈍亀」
……絶対無理だろ
。。。
「佐疫行ったぞ!!」
室内で素早く動く黒い影
大きな爪を持ったそいつは佐疫の前に姿を現し、その爪を振りかざしていた
しかしお互い慌てる事もなくその爪は佐疫の前に出た俺の背中で受け止め、佐疫自身は俺の腹から銃先を貫通させゼロ距離で相手を仕留める
「うわ…名無しさんよ背中ぱっくりいってる」
「ゴボゴボゴボ」
「口に溜まった血を吐いてから喋って」
いやお前が胃を貫いたからだし
刺さったままの銃を引き抜き、口にある血を吐き捨てるがやはり血が止まらないため口から溢れ続けている
「ゲホッ……この黒いの殺して良かったんだっけ?」
「いいよ。亡者を食べる悪質な奴だから」
「ふーん」
何気なしに貫かれた腹を摩ると既に血が止まっていて皮膚の方はだいたい繋がった事が分かるが、まだ内臓の方が壊れているので体内に血が溜まっていき口から出る血が多くなってきた
溢れ出る血にとうとう喋れなくなって口を開いたまま下を向く
「本当名無しさんは治るの早いよね」
それが俺の取得だからな
他の獄卒より少し体が頑丈で治りが早い
流石に原型を留めないくらいになったら先生は必要だが、中に異物が残らない限りほっときゃ治る
故に戦闘不能になりにくい俺は皆の盾になるのが仕事だ
しかし滝みたいに口から出てるよと背中を叩くが佐疫!!確かに中の血が出やすくなってるけどそれ痛いから!!まだ背中の傷開いたままだから!!治るの早いし盾になるけど痛覚あるから!!
「お前…ゴポッ先に帰っててもいいんだぞ」
俺は血を吐きながら帰る訳にいかないしまだいるけどさ
あと帰ったら災藤さんに報告しておいて貰うと助かる
「…俺もここにいる」
そう言って俺の背中を摩る佐疫
えっなに急に優しく触って来たからビビった
「……名無しさんが傷つく姿なんて見たく無いのに」
なんか言ったか?
血が床に当たる音で佐疫が何を言ったのか分からなかった
でもまあ暗い顔してるから俺の悪口言ったんだろうと察して追求しない
「あっ!胃が無いとゴポッ…キリカさんのご飯が!!」
「……」
「いって!なんで背中叩いた!?」
。。。
「好きすぎて素直になれないなんて、佐疫も中々初だな……なあ災藤」
「はい?」
「あの2人は今どこに?」
「今は仕事へ。とは言ってもかなり時間かかってる様ですが」
「盛んだな」
「ね。外でなんて…帰ってからすればいいのに」