短夢

□【ダンロンV3】最原とラブアパート
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「……」
「……」

ここに来ると、他のみんなは僕を理想の相手だと思って妄想し始めるんだよな……


目の前にいるのは名無しさんくん。そもそも名無しさんくんが妄想するのかすら分からないし、密かに芽生えてしまった想い人の妄想はどんなものかとても気になる

こんな場所に2人きり……思わず唾を飲み込んだ僕を置いといて、キョロキョロと周りを見渡していた名無しさんくんは口を開いた


「趣味悪い部屋だな……」


えっそこから?
確かにベッドの周りをメリーゴーランドみたいに回る馬とかいるけど……


「最原、これベッドから出る時タイミング見ないと馬に轢かれるぜ……ぐぅっ」
「た、タイミング見て名無しさんくん!」


言ったそばから馬に轢かれ横に飛ばされた名無しさんくん。駆け寄って名無しさんくんの手を取り、状態を見る為ベッドへ誘導した
自分から制服の裾を捲り、馬にぶつかった脇腹を見せた名無しさんくんの肌は赤くなっていて……

「痛そう……」
「湿布貼っときゃ治るだろ……いてっ」
「あ、ごめん!」

お、思わず触ってしまった……!普通生活していて触る機会なんて無い、直の脇腹に……!

笑っていいよと言ってくれる名無しさんくんに安心する僕
しかしここまではいつも通りの僕達。妄想し始めるっていうのはなんなんだろうか……


「最原?」
「あ、えっな、何?」
「いや、考え事してたからどうしたのかと」

考え込んでいた僕は下を向いていたらしく、身を屈めて顔を伺っている名無しさんくんは……なんというか正直……


「ち、近いよ……」
「ん、ワリ」

しかし名無しさんくんは離れること無くじっと僕を見つめている

「最原ってけっこう可愛い顔してんのな」
「へぇ!?急にどうしたの!!?」
「いやなんとなく思っただけ」

嬉しいような恥ずかしいようなごちゃごちゃの気持ちで頭を埋め尽くされ、顔に血が登っていく。ど、どうしよう今どんな顔をすれば……!!





「最原」


ぎゅう
膝の上で大人しくしていた拳を上から握り、観察する物とは違う真っ直ぐな視線で僕を見る名無しさんくん

ドキリとして目を逸らそうにも不思議な魅力に惹き込まれ逸らすことが出来ない


「最原は俺にして欲しい事とかあるか?」
「な、に……どうして?」
「最原が待ってる気がして」


そりゃずっと名無しさんくんの妄想が始まるのは待ってたけど

名無しさんくん、淡白というか現実主義そうだと思ってたけどホントに妄想とかしないんだ
……このまま部屋を出たらどうなるんだろう。途中でやめれば相手は苦しい思いをするらしいけど、このまま平行線なわけにもいかないし



ーーーどうせあの扉を出れば忘れるんだ






「名無しさんくんに、抱きしめられて、そして、好きって……たくさん言って欲しい」

たどたどしくなってしまったが僕の欲望を吐き出す。そうすれば名無しさんくんは一瞬考えるような間が空いた後、優しく僕を抱きしめた


「最原、好き。大好き」


夢みたいだ

一生言ってもらえるなんて思ってなかった言葉が名無しさんくんの喉から、口から発されている


「な、名前で……」
「ん?」
「名前で読んでほしい……です」

「……終一」


頭がふわふわする。間近で聞こえる名無しさんくんの声。全身で伝わる体温。強く感じる匂い。全てが僕の思考を溶かすのに十分な材料だった


「終一、愛してる」


えっ?


かき上げられた前髪とおでこに柔らかい感触
視界には名無しさんくんの喉元

こ、これはまさしく


「キッキキキキキス……」





あ、もうだめ

。。。


「……あれ」

目が覚めればあの趣味の悪いピンクの部屋ではなくて

「夢?……そりゃそうか、名無しさんくんがあんな」





あんな事してくれたのを何故覚えている?





愛の鍵を使う前に知っていた、扉を出れば記憶が無くなるというのですらハッキリと覚えている
名無しさんくんの妄想が始まらない事も、名無しさんくんにしてもらった事も


「うぷぷぷ。こうなるとはね!」

僕のベッドの足元からツーカラーの熊
思わず身構えたがモノクマはそのまま立って話し始めるだけだった

「2人が同時に愛の鍵を使ったらどうなるか気になってたんだけど。まさか記憶が無くならない上にどっちも妄想が始まらないなんて……あっでも片方始まったか」
「記憶が無くならない……?」


そんな、じゃあ、もしかして

掴みかかろうとした僕を制するかのように鳴ったチャイムに慌てて扉を開ける

そこに立っていたのは……




「おはよう最原……あ、終一の方がいいか?」







ああ、僕の人生終わった

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