短夢
□【イナイレ】行ってらっしゃい吹雪
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白恋中生主人公
「へー吹雪が宇宙人倒しに行くんだ」
サッカーって怖いな
久々に話す小学校から一緒の学校だった吹雪が大荷物持ってると思ったら、俺に「エイリア学園を倒す為に北海道を出る」と報告してきた
サッカーか、昔は一緒にやってたよな
…アツヤが居なくなってからやらなくなったけど
「うん、だから名無しさんくんにはとても寂しい思いをさせると思うんだ…」
「そうだなあ…」
悪いけどとても寂しくは無いけどな
俺がサッカーをやらなくなってから吹雪との交流も途絶えたし、なによりお前の周り女子ばっかで羨ま……鬱陶しいし
でも吹雪達が勝てば地球に平和が訪れるんだもんな。妬んでる場合じゃない
「まあ、お互い携帯持ってるんだから電話すればいいだろ」
そんな重い任務背負ってんだから辛くなる時があるだろう。一応友達なんだからいつでもかけてこい
そう伝えると吹雪はいい笑顔で頷いた
頑張れよと肩を叩こうとしたらその手を掴まれ、吹雪の両手に包み込まれる
何事だと驚いてる俺の目の前の吹雪は照れた顔でこちらを見ていた
「毎日顔を見れなくなるのは身を裂かれるような気持ちだよ…」
「いや休日とか会ってな…」
「でもね!そんな思いをしないでいられる方法を思いついたんだ!」
吹雪が持っていた二つの鞄の内の一つを俺に差し出す
この鞄すげー見覚えがあるんだけど
「名無しさんくんもキャラバンに入っちゃえばいいんだよ!」
名無しさんくんの荷物をまとめておいたから大丈夫だよ!
さっきより笑顔を深くして言う吹雪に眩暈がした
「いや俺もう数年はサッカーしてないし…最強メンバー集めてる中に入れてもらえる訳ないし…」
「名無しさんくんが来ないならキャラバンに入らないって言ったから入れるよ!」
なあ吹雪知ってるか?それ脅しって言うんだぜ
嬉しそうな吹雪は掴んだままの手を頬にすり寄せる
触り心地のいい頬が暖かく気持ちいい
「あの日からまともに喋ることもできなかったから、その分埋められる旅にしようね」
この手を離さないでね
なんだか薄ら怖い笑顔な吹雪
いやそう言う旅じゃ無いだろ
ツッコミを入れる前にイナズマキャラバンの監督に呼ばれた
。
「あなた自身はイナズマキャラバンに入る気はあるの?」
監督が俺に用があるから吹雪に席を外して貰っており、俺と監督二人きりになった途端監督がそう聞いてきた
「正直無いです…」
だってもうサッカーしてないし
技も何も無いやつがいたって足手まといだろ
「すみません吹雪が迷惑かけて…」
「いえ、こちらも急に申し出た事だから…」
ちらりと吹雪を見るとまだバスの中には入っておらず、バスの窓から顔を出しているキャプテン。…たしかGKのオレンジバンダナと話していた
窓を開けると冷気がバスに入るから入ればいいのに
「なんとかして吹雪だけ旅に出せないか…」
俺は行きたくない。というか全国レベルの中に素人が入るなんて真っ平御免だ
「じゃああなたにはやって欲しい事があるのだけど……」
監督が話した作戦
不安は残るが最終手段としてそれを実行する
。。。
「吹雪お待たせ。先に中入っててくれて良かったのに」
「ううん、できるだけ名無しさんくんと一緒にいたいから」
俺は吹雪にとってのなんなんだ
二人でバスの前に並ぶとドアが開き、先に監督から乗ってもらう
そして寒い中立ち尽くしていた吹雪を早く暖めたくてバスに入れる為軽く背中を押す
それは半分本音で半分作戦
背中を押していた手に力を入れて吹雪を突き飛ばした瞬間、バスの扉が閉まり始める音が響いた
ごめんな吹雪。このキャラバンに必要なのはお前だけなんだ
バランスを崩した吹雪を監督が受け止め、扉が完全に閉まる前にバスが動き始める
ーーーはずだったのに
「は?」
受け止めるはずの監督を突き飛ばし、それを反動に踵を返した
そして俺の手を取り思いっきり引かれれば、そんな事予想してなかった俺は簡単にバランスを崩してしまう
後ろから扉が完全に閉まる音
目の前には満面の笑みの吹雪
「手を離さないでねって言ったよね?」
その言葉は物理的に離すなという意味ではなく、そばにいてねという暗喩で
「まあ僕が離さないけどね」
どんな手を使っても離れないからの意味だと悟った