短夢

□【FGO】アレキサンダーと作業員
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「魔力ちょーだい」

この小さい赤髪はいきなり作業部屋入ってきて一言目がそれって。

「サーヴァントの魔力供給は藤丸から貰った方がいいのでは?」
「でもマスターは今ロンドンだよ。禁断の貢が足りないんだって」
「……カルデアにいれば勝手に供給されるから」
「そんな徐々にじゃなくて一気に欲しい。お腹空いてる時はガッツリ食べたいでしょ?」

「そもそも俺に魔力なんて無いのだが」

それはお前も知ってる筈だろうに。


「もう!魔力なんて満タンに決まってるじゃん!」

効果音にするならぷんぷんか。書類から目を離しアレキサンダーの方を見れば両手の握りこぶしを上下に振って不機嫌だと主張してくる。

「夜の魔力供給しようってお誘いしてるの気づかないなんて童貞拗らせすぎ!」
「夜の魔力供給」

流行ってんのかその言い方。
俺が自分を見てるかしっかり確認してから頬を膨らませるこいつにデコピン一つお見舞い。
そして作業室に添え付けられている冷凍庫を漁った。

「腹減ってんなら食え」
「それ知ってる。アイスってやつだ」

16本で198円という超お手頃価格のフルーツ味のアイスを手渡せば、慣れた手つきで袋を開けてアイスを咥える。

「……んっ♡」

いかんこの流れは面倒になるから作業再開しよう。

後ろからじゅぷじゅぷだのチューチューだのの音の合間にアレキサンダーの小さな声も混じって聞こえる。大人しくアイス食ってくれ。

「んぁ……あれ!?」

ドスッ

「人がアイス食べてるのに目を背けるなんてどうかしてると思うよ!?」
「人がアイス食ってるのをガン見する方がどうかしてるよ」

攻撃されたんじゃねえかってくらい勢い良く飛びつかれた背中が痛い。しかもアイス食いかけのまま俺の肩から顔を出しているからいつ書類に垂れるか分からないし早く退け。
そう言葉にしてもアレキサンダーはふーんとおざなりな返事のままアイスを食べ始めた。


「もしかしてこういうのは趣味じゃなかった?キミの部屋の本で見たんだけど」
「俺の知らない本ですね」

あれは総集編になっててお目当てはの話はそれじゃないというかなんで勝手に部屋に入ってんだよ。

「部屋のパスコードなんてみんな知ってるよ」
「なんだと」

指紋から察する者、俺が入るのを見ていた者、そもそも千里眼に見えない物は無い者と様々な方法で知っているらしい。パスコード変えようと思ったけど千里眼使われたら終わりじゃん。
その場合未来視なのか現在視なのか気になるがそんな事より物理的な鍵にする算段を立てるか。


「あっ」
「ぐっ……!!」

オノマトペ的にはベシャリだろうか。アレキサンダーの持っているアイスの軸がぶれアイスの先端が俺の頬にくっついた。
アレキサンダーがすぐ離したが食べかけのアイスは俺の頬にベッタリ着いていて気持ち悪い。

「もったいなー」
「つけたのお前だしウェットティッシュをおうううう!!」

ばっかじゃねえのコイツ!!!!???俺の頬舐めやがった!!!!
慌てて椅子のローラーを転がし距離を取ってもアレキサンダーはなんで離れたと言わんばかりにきょとん顔。

「まだ付いてるよ」
「いやいやいや舐めに来るな自分で拭くから」

目の前のアレキサンダーに警戒しつつウェットティッシュを手探りで探しても見つからない。昨日新しいの出した記憶があるのだが……。

位置を変えて何度も手のひらを机に置く俺の行動の理由を知ってか知らずかアレキサンダーは自分の手の中の箱を持ち上げた。

「もしかしてこれ?」
「そうそれしかしそれ以上近寄るなその箱をゆっくりこちらに投げてくれほんとゆっくり」
「そんな事言わずに」
「やめろ来るなせめてそのティッシュ置かずに持ってきてうわああああ!!!」

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