文スト長編

□第一章
2ページ/3ページ


同日の三十分後位だろうか、ポートマフィアの本拠地であるビルが周りの建物の隙間から見えた
近年に一度だけ入った事がある為、ビル内の構造は完全に知らない訳では無い

服装もワイシャツに黒地のベストワンピース。

マフィア内に潜んでも余り違和感は無さそうな衣類を選んだ。流石に此処からでも幾人かの黒い人影が見えたが、緊張感なんて無かった

先程の大きな後悔を越す物は無い、脳の感性が麻痺しているのかも知れないが、これらの光景からの恐怖は今の私には関係無かった。
寧ろ、変に焦る方がかえって怪しまれる事だろう





なんて考えたは辞めを繰り返したが脚は止まらなかった。





知り合いに仲の良いポートマフィアの一人がいる。私と歳も顔もそこまで差が無いだろうその彼女からマフィアの身分証明書の様なものを預かっていた

これをさえ持っていればある程度の事は平気らしい





そしてロビーの様な場所を抜けた先のエレベーターにて誰かと共に乗ってしまった。黒服の彼を横目で見ると目が合ってしまったので軽く頭を下げる。

何処かで見た事がある様な

彼は何かを言おうとしていた様だったが私は気にせずエレベーターを降りそのまま真っ直ぐ最奥の通信保管所へと速歩きで向かう





鍵は空いていた。中には人が二人程いた故軽く頭を下げて進む。

入口からも目的であろう厳重な鉄の扉が見える



幸い、鍵は持っていた





彼女が貸してくれたのだ




こんな所の鍵を持ち歩けるなんて、彼女は偉い方なのだろうか






そして、初めて入り初めて見た光景に息を呑む
沢山の棚に書類、ファイルが綺麗に揃えられている。



相当几帳面な人なのだろうか、年代順に並べられている。それらを幾つか手に取ると一つ一つにかなりの重さがあった。


そして、目的の一つ目
【二十五年前ノ死者復活ニツイテ】と書された物を手に取り鞄に入れる。

そして、もう一つの書類も直ぐに見つかり鞄に入れようとした時だった。





「え、」



腕を掴まれたのだ。



(嘘、さっきまで全然気配がしなかったのに…、)



冷や汗が項を蔦る




腕をつかむその裾は黒かった。



「書類の持ち出しは厳禁だ。」




その感情の読み取れない氷の様な声に頭が警告の赤い光を放っている。





やや右を向くと其処にはつい先程エレベーターに共に乗った黒服の彼がいた。




その顔を確認した直後書類手に持ち乍掴まれていた右腕を大きく左に回し振り解く。
小柄な故か彼はそこまで力を込めていなかったから行けると思った。

そして雑に書類を鞄に詰め全力で逃げ出した。



「待てっ、」




背後から聞こえる声に私は止まらなかった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ