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□1.始まりの詩
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多額の資金を保有する富裕層の存在は、社会のバランスを乱しつつあり、その国の振興や改革を妨げていた。発展向上を、望む国家にとって貢献しない富裕層は実に不快な存在だった。いずれ平坦となり世界に調和が訪れ誰もが当たり前のように食にありつき、少しの娯楽に嗜む余裕も出来るだろう、そう考えていた政治家達であったが、代々に渡り後継の絶たない権力者を前に、希望は漸減していた。

巨億の資金を保持するものは世界各国に数える程しか存在しないにも関わらず、その国々の紙幣や硬貨の大半を占めていた。トップ8人の総資金はなんと、世界人口36億人分に値した。
それが不順を起こし、労働者に充分な賃金を給与出来ず、雇い手もいなくなり、必然的に消費者が年々と減少していた。つまり物資の生産率を滞らせる邪魔な存在のだ。その現状を打開するべく国が苦渋の選択をし、差し向けた切り札の一枚があのハイジャック犯であった。実は工作員と呼ばれる者は各国に多く存在し、その工作員の全てが姓名や個人データを抹消され、幼少期より優秀な切り札となるべく国が秘密裏に設けた施設で未だ特訓を受け続けている。
訓練を重ねた子供は精神や肉体が成熟する年齢になると強制的に仕事をさせられる。例え未発達状態であれ例外はない。
こうして出征される工作員は精神共に屈強なものであり、その大半は親の知らない捨て子であった。
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