新選組に飼われたいネコ

□24・藤堂さん
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それから暫く経ったある日、藤堂さんが屯所を出て行ってしまった。
斎藤さんも一緒だった。

どうして?
気になったボクはついて行った。
何度か角を曲がって歩き続けたみんなは、あるお寺に入って行った。
中に入ったみんなの姿が見えない。
ずっと出入り口を見ていたけど、誰も出てこない。
もうすぐ日が暮れそうだ。今日は動かないのかな、ここに泊まるのかな。

塀に登ってぐるっとお寺の周りを回ったら、斎藤さんを見つけたけど、ボクに見向きもしないで行っちゃった。
明日また見に来ようっと。

だけど、その考えは甘かった。
次の日、同じお寺を訪ねたけれど、藤堂さんも斎藤さんもいなかった。
どこに行っちゃったんだろう。淋しいな。

次の日も覗きに来たけど、やっぱりいない。
どこに行っちゃったんだろう。帰って来るかなぁ。
随分前に土方さんや斎藤さんが屯所を離れて、何ヶ月も帰って来ない時があったんだ。
だから今度も待っていたらいつかは帰って来るかもしれない。

考え事をしながら河原をとぼとぼ歩いていたら、橋の上に斎藤さんを見つけたよ。
ボクは急いで土手を駆けのぼった。

どこに行っていたの!探したんだよ!

ボクに気付いた斎藤さんは、少しだけ困ったように笑って、ボクの前に屈んでくれた。
おでこをひと撫でして「もう行きな」と言って、斎藤さんはどこかへ行ってしまった。

藤堂さんも斎藤さんも帰って来ない新選組の屯所。
大きなお引っ越しをしたのは、二人がいない間なんだ。
帰って来た時に誰もいなかったらビックリしちゃうぞ。

でも大丈夫、ボクやクロさんは今まで通り壬生寺に通っているから。
河原にも遊びに行くし、藤堂さんと斎藤さんが困っていたら、ボクが道案内をしてあげる。
だから大丈夫、いつでも帰って来ていいんだよ。

けれども、次の日の、その次の日も、壬生寺にも河原にも二人はやって来なかった。

それからどれだけ夜を繰り返したか分からない。

ある日突然、斎藤さんがみんなのもとへ戻ってきたんだ。
ビックリしたよ、ボクは大喜びした。ちゃんとお引っ越しを知っていたんだね!

だけど何故か、藤堂さんはいなかった。

斎藤さんの前で「なぉん?」って鳴いて尋ねたら、伝わらなかったのかな。
淋しそうな顔でにこりとして、行っちゃった。

今でも河原へ通っているけれど、藤堂さんは見かけない。
どこへ行っちゃったんだろう。
いい石を見つけて、一か所にまとめて置いてあるんだよ。

だいぶ増えたんだ、藤堂さんなら絶対に向こう岸まで届けられる。
また見たいなぁ。

ボクにも出来るかなって試すけれど、やっぱりぽちゃんと落ちちゃうんだ。
水の上を走る石、もう一度見たいよ。
藤堂さん、どこに行っちゃったんだろう。
 
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