新選組に飼われたいネコ

□24・藤堂さん
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新選組の中に、クロさんみたいな人がいるんだ。
斎藤さん?
違うよ、藤堂さんって言うんだ。
おでこにね、傷痕があるんだよ。クロさんみたいでしょ。

一緒に日野を出た時に傷は無かった。
みんなが落ち着かない様子で次々と屯所を出て行ったあの日、帰って来た藤堂さんのおでこに傷があったんだ。

クロさんと違って、藤堂さんはおでこの傷を気にしていない。
それどころか自慢げに傷が出来た時の話をしていたよ。
面白い人だなぁ。


藤堂さんは河原でボクに面白い遊びを教えてくれた。
川に向かって石を投げるんだ。
それで終わりじゃないんだよ、石が水面を跳ねて進んでいくの。ボク、ビックリしちゃった。

ボクも真似して石を投げてみたけれど、ぽちゃんって沈んじゃったよ。
藤堂さんはとっても笑っていた。楽しそうだったよ、ボクを撫でてくれたしね。
頑張ったなって何度も撫でてくれたよ。

「丸くてな、平べったい石がいいんだぞ」

水面を走らせるには薄くて丸い石がいい。
藤堂さんが教えてくれたから、ボクは河原から気に入った石を見つけて、もう一度試したんだ。
結果は同じだったよ。でもね、いい石を選んだなって褒めてくれたの。
だからボクはもう一度、似たような石を探したよ。
今度はその石を藤堂さんに渡したんだ。

「俺にくれるのか。よぉし!じゃあ遠くまで飛ばさねぇとな!」

見てろよ、と言って藤堂さんは勢いよく石を投げた。
そうしたら生き物みたいに、石がぴょんぴょんと水面を跳ねたんだ。
ボク達ネコのかけっこみたい。早くてあっという間に遠ざかっていった。

「おぉ!見たか、ひー!向こう岸まで届いたぞ!!ひーが選んだ石のおかげだな!」

「なぁん!」

藤堂さんが上手なんだよ!でもそう言ってもらえると嬉しいな。
ボクは嬉しすぎて藤堂さんに飛び付いた。
ごろごろ喉を鳴らして顔を擦り付けた後、ボクは川の向こう岸を目指したよ。ちゃんと橋を渡ってね。

向こう岸に回った時、藤堂さんは眩しい笑顔でボクに手を振ってくれていた。
残念ながら藤堂さんが投げた石は見つからなかったけど、とっても楽しい一日だった。

この日以来、ボクは何度か河原で藤堂さんと石投げて水を切る遊びを楽しんだ。
いい石の見つけ方もすっかり分かったよ。
 
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