新選組に飼われたいネコ

□17・だんだら騒ぎ
1ページ/2ページ


沖田くんがすっかり元気になった。
前と変わらず、子供達と壬生寺で走り回っている。

たまに鴨川で出会うのも、前と変わらない。

ある時、ボクは鴨川で沖田くんに助けられた。
川で溺れたわけじゃないよ、怖い男の人から守ってくれたんだ。


ボクの背中には時々だんだら模様の布切れがついている。
沖田くんがくれた物だ。
汚れたらみんなが洗ってくれる。
みんなの羽織と一緒に干してくれるんだよ。

乾くのが待ちきれない時もあれば、洗ってもらったまま、忘れて過ごすこともある。
だってボクは猫だもの、気まぐれでもいいでしょう。

今日は久しぶりにだんだらの布切れをつけてもらった。
嬉しくてはしゃいだボクは、鴨川までご機嫌に駆けて来た。

川面に姿が移るかな。
水辺に近付いたボクは、首を伸ばして自分の姿を覗いた。
あまりよく見えない。
もう少し進んでみようかな、水に落ちないように気を付けて。

そろそろと石の上を進んで、自分の姿が水面によく映る場所を見つけた。

なんて格好いいんだろう、浅葱色に白抜きのだんだら。
隊士のみんなとお揃いだと思うと、背筋が伸びちゃう。
これを付けている時は、恥ずかしい姿を見せちゃいけない気がしたんだ。

自分の姿に見惚れるのも少し恥ずかしいね。
満足したボクは戻ろうと体を反転させた。
その時、何かがボクをかすめて飛んでいき、川の中に落ちた。

石だ。
危ないことをする、誰の仕業だ。子供か、意地悪な大人か。
石が飛んできた方を見ようとしたら、また影が飛んできた。

ボクは慌てて影を除けた。
河原の石は滑る。危うく川に落ちそうになった。
だけど、ここで止まったらまた次の石が飛んでくる気がして、踏ん張った。
滑る足を上手く操って、安定した岸辺まで戻ってきた。

ここまで来たらもう石なんかに当たらないぞ。
そう思って石を投げた人間を睨もうとしたら、何てことだ、銀色に輝く塊が飛んできた。
これ、刀でしょ。
猫に刀を向けるなんて、この人間は何を考えているんだ。
 
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ