新選組に飼われたいネコ

□20・沖田くんの風邪
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最近、沖田くんがよく風邪を引く。
小さな咳をするんだ。
すぐに治まるけど、たまにコホンって聞こえるんだよ。
人間がコホンとする時は風邪だって、聞いたことがある。

ある日、心配になって咳をしている沖田くんに近付いた。
そうしたら、沖田くんは「どうしたの」と言って、苦しそうに微笑んだ。

どうしたのって聞きたいのはボクのほうだよ。
ボクが見ている間、沖田くんはずっと我慢しているように見えたから、早く良くなってねと一鳴きして、ボクは沖田くんのそばを離れた。

一緒に遊びたかったけれど、そう言えば最近走り回っている沖田くんを見ていない。
巡察に行く姿を見ることはあるけれど、子供達と遊ぶ姿は見なくなった。


「ねぇクロさん、最近、沖田くんは風邪を引いているよね」

「風邪?」

「ずっとコホンって咳をするでしょ」

「どこか悪いんだろう」

「すぐに治るよね」

「人間の体なんて俺には分からないさ」

「土方さんのお薬だってあるし、きっと大丈夫だよね」

「分からないよ」

大丈夫って言って欲しかったけど、クロさんは真面目に考えて分からないと言った。
ボクにも分からない。人間の体のことなんて。

土方さんなら知っているのかな。
部屋を覗きに行ったら、部屋は空だった。
いつも忙しい人だからなぁ。

沖田くんは部屋に籠っているようだ。
障子も閉まっていて、静かだ。お昼寝でもしているのかな。

遊び相手が欲しかったボクは、壬生寺まで遊び相手を探しに向かった。
隊士の誰かがいるだろう。
沖田くんが一緒じゃないから、子供達とは遊びたくないな。
いろんなことを考えて壬生へ向かい、思った通り、遊び相手を見つけたボクは、気の向くまま楽しい時間を過ごした。

温かい縁側で休みたくなったボクは、西本願寺の屯所へ戻ってきた。すると、土方さんも戻っていた。
縁側で腕組みをして立って、何をしているんだろう。

「なぉん」

足元に絡みついて訊ねたら、「おぉ」と気付いた土方さんが腕組みを解いた。
その時、コンコンと小さな咳が続いて聞こえた。
沖田くんの部屋からだ。
ボクが顔を上げると、土方さんも沖田くんの部屋を見つめていた。
土方さんも心配なんだね。

「なぁぅ・・・」

「お前も心配なんだな。大丈夫さ、総司は」

そう言った土方さんは、笑っているのに淋しそうに見えた。
どうしてそんなに淋しそうなの。ボクまで淋しい気分になっちゃうよ。
 
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