新選組に飼われたいネコ
□20・沖田くんの風邪
1ページ/2ページ
最近、沖田くんがよく風邪を引く。
小さな咳をするんだ。
すぐに治まるけど、たまにコホンって聞こえるんだよ。
人間がコホンとする時は風邪だって、聞いたことがある。
ある日、心配になって咳をしている沖田くんに近付いた。
そうしたら、沖田くんは「どうしたの」と言って、苦しそうに微笑んだ。
どうしたのって聞きたいのはボクのほうだよ。
ボクが見ている間、沖田くんはずっと我慢しているように見えたから、早く良くなってねと一鳴きして、ボクは沖田くんのそばを離れた。
一緒に遊びたかったけれど、そう言えば最近走り回っている沖田くんを見ていない。
巡察に行く姿を見ることはあるけれど、子供達と遊ぶ姿は見なくなった。
「ねぇクロさん、最近、沖田くんは風邪を引いているよね」
「風邪?」
「ずっとコホンって咳をするでしょ」
「どこか悪いんだろう」
「すぐに治るよね」
「人間の体なんて俺には分からないさ」
「土方さんのお薬だってあるし、きっと大丈夫だよね」
「分からないよ」
大丈夫って言って欲しかったけど、クロさんは真面目に考えて分からないと言った。
ボクにも分からない。人間の体のことなんて。
土方さんなら知っているのかな。
部屋を覗きに行ったら、部屋は空だった。
いつも忙しい人だからなぁ。
沖田くんは部屋に籠っているようだ。
障子も閉まっていて、静かだ。お昼寝でもしているのかな。
遊び相手が欲しかったボクは、壬生寺まで遊び相手を探しに向かった。
隊士の誰かがいるだろう。
沖田くんが一緒じゃないから、子供達とは遊びたくないな。
いろんなことを考えて壬生へ向かい、思った通り、遊び相手を見つけたボクは、気の向くまま楽しい時間を過ごした。
温かい縁側で休みたくなったボクは、西本願寺の屯所へ戻ってきた。すると、土方さんも戻っていた。
縁側で腕組みをして立って、何をしているんだろう。
「なぉん」
足元に絡みついて訊ねたら、「おぉ」と気付いた土方さんが腕組みを解いた。
その時、コンコンと小さな咳が続いて聞こえた。
沖田くんの部屋からだ。
ボクが顔を上げると、土方さんも沖田くんの部屋を見つめていた。
土方さんも心配なんだね。
「なぁぅ・・・」
「お前も心配なんだな。大丈夫さ、総司は」
そう言った土方さんは、笑っているのに淋しそうに見えた。
どうしてそんなに淋しそうなの。ボクまで淋しい気分になっちゃうよ。