新選組に飼われたいネコ
□26・沖田くんのお供
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沖田くんが壬生寺へ行くと聞いたボクは、お供した。
ボクの他にもう一人。斎藤さんが沖田くんを気遣うように歩いている。
「ありがとうございます、屯所を移る前に来ておきたいだなんて、我が儘にお付き合いくださって」
「君が一人で出かけてうっかり討ち取られる方が余程迷惑なんでね」
「うっかりとは失礼ですね」
「うっかりの方が良かろう、本気で討ち取られてはそれこそ新選組の恥」
喧嘩をしているように聞こえても、二人はとても楽しそうに話している。
それにしてもおかしな話をしている。
沖田くんは簡単に負けたりしないのに、うっかり負けるか負けないかだなんて。
おまけに屯所を移るって、またお引っ越しするのかな。この前お引っ越ししたばかりなのに。
沖田くんは風邪を引いたり治ったりを繰り返しているのか、滅多に外に出なくなっていた。
ボクはしょっちゅう壬生寺まで来ていたけれど、沖田くんと来るのは本当に久しぶりだ。
相変わらず優しい笑顔を見せてくれるけど、ほんの少しだけ、何か違うんだ。
こうして歩く姿も、以前とは違う。とても気になるよね。
山門をくぐって奥まで進み、二人は本堂に向かい軽く頭を下げると、そのまま階段に腰掛けた。
「大丈夫か」
「平気ですよ、ですが、体力が落ちたのは否めませんね、ここまで歩いて正直疲れました。あははっ、情けないですが」
「フン、今は養生第一だ、気にしても仕方あるまい。歩けるなら歩けばいい、体力が戻る」
「あははっ、本当にありがとうございます。いつも何かを頼むと嫌そうな顔をしていた貴方が」
「それとこれとは別だ」
沖田くんが嬉しそうに頷いた。斎藤さんの優しい言葉。
斎藤さんって優しいよね。ボク、知っているよ。
二人の後ろをついて来たボクは、二人が話し込んでいるそばで暫く遊んでいた。
不意に顔を上げたら、沖田くんと目が合った。
こんな時、にっこりと微笑んでくれる沖田くんが大好きだ。
ボクは階段へ向かい、二人の間に入り込んだ。
うふふと笑って沖田くんがボクを撫でてくれる。
続いて、斎藤さんが長い指でボクの顔周りを撫でてくれた。
気持良くてくすぐったい。ボクは思わずごろごろと喉を鳴らした。