名探偵コナン

□命短し恋せよ乙女 2
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心のどこかで気づいてた
私がライに向ける想いは恋じゃないってこと
それでも恋と錯覚していたかった


「ライ…無事でいて」


そう願いながらジンが買ってくれたバイクを飛ばす


微かに聞こえる何発もの銃声
その音に向かい アクセルを踏み込む


(──見えた!)


私が示した川にいた
もしかしたらライは私が裏切ったと思っているかもしれない


そこにはライやジン、ウォッカ達という幹部が揃っていた
恐らく本気でライを潰す気なのだろう
当然だ ライ─赤井秀一は組織にとって
厄介すぎるほどの敵なのだから


ジンの愛銃 ベレッタの銃口がライの頭に向けられる


脳幹ブチ抜いて楽に死なせてやるよ
と言わんばかりにジンが口角を上げる


引き金を引く直前 やっと追いついた
ジンとライの間に体を滑らせ ライを力任せに川に落とす


パァン… 乾いた音が辺りに響く


胸が焼けるように熱い、というのは錯覚ではなかったようで
視界の端に真っ赤な飛沫が飛び散った


自分の血らしい、と認識したのはだいぶ後


何故か痛くはなかった


どうやら私から照準をずらそうとして下に銃口を向けてしまったためらしい


いつだってジンは私にだけは優しかった


初めて私の頭を撫でてくれたのも 娯楽を教えてくれたのも
助けてくれたのも 笑いかけてくれたのもジンだった


ジンがいなきゃ私は生きていけない


漸くジンに抱く想いが形になる


顔色を変え 駆け寄ってきたジンに抱えられる
助からないと分かっているくせに 止血をしようとしてくれるジン


「##NAME2##!おい しっかりしろ!」


私のために叫んで 止血をしようとしてくれるジンに手に
いつの間にか力が入らなくなっていた私の手を重ねる


「ジン…ねぇ…聞いて…… 私ね──」


「うるせぇ 遺言みてぇに言うな!」


伝えようとした言葉を遮られ怒鳴られる
いつもなら怯えていたのに 今日に限って笑みが零れる


「ジン…聞いて…あのね……」


次は遮られなかった その代わりに顔を逸らされる


そんな彼に苦笑し そっと袖を引いた
ちらっとこちらを見てまた逸らす


重い体をゆっくり起こし ジンの唇に自分のそれを押し当てる


その時のジンの表情を私は死んでも忘れない 忘れられない
目を見開き 茫然と私を見つめた
綺麗な瞳に見つめられ 私は息も絶え絶えに笑う


「ねぇ…好きよ 愛してる… 他の誰でもなくジンを愛してる…」


吸い込まれそうなほど綺麗な彼の瞳見つめて言う


「夏稀…っ」


ジンしか知らない本当の名前を呼ばれる
その事に驚いてるとジンの顔が近づき 距離が0になる


ジンがキスをしてくれた
仕事以外では絶対しないキスを私に


それは私も想われていたということでいいのかな?


相変わらず言葉少なで不器用なジン
そんな所を好きになった


あぁ…そろそろ眠たくなってきちゃった
もっとジンに伝えたいことがあるのに
ジンと話したいのに……


視界が霞んで 耳に水の膜が張っているような感覚がある


折角ジンが私を見てくれているのに目を合わせる事すら叶わない
いつになく必死な声でジンが私を呼んでいるのにほとんど聞こえない


ジン…また…いつか逢おうね
私達ならいつか必ず逢えるから
そしたらその時は絶対に2人で幸せになろう?


いつかまた…


唇だけでそう伝え、私はジンの腕の中で目を閉じた
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