お前ら、準備はいいかァ!!(longdream)

□第1章 あの日の話をしようか(氷)
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「………終わったねぇ。全国大会」

「時が過ぎるのは早いねー」

どんどん気力が削がれていく暑さのなか彼らの戦いは幕を閉じた。

「城川ちゃんと出会って半年も経つんだねぇ」

「奇妙な出会い方だったねー」

「忘れたくても忘れられねぇわ」

「えー宍戸は素敵な出会い忘れたいのー?」

「そうじゃねぇけどよ……。ただそんぐらい変な出会い方だっただろ?」

「まあ木の上から落っこちてきたら誰だってびっくりするC」

「まあでしょうねー」

そう、僕たちの出会いは普通では、あり得ない出会い方だったのだ。

時は遡り、暑いとは真逆の寒い冬。僕は歩道を歩いていた。

「はーるのーうらーらーのずーんーだーもーちー」

「ずんだもち?!」

美人で基本的になんでもできる、『才色兼備』という言葉が似合う幼なじみ陽と一緒に。………まあ、性格はとても残念なのだが。

「え?もしかして真、知らない?ずんだもち」

「いや、ずんだもちは知ってるよー!?ってそうじ…………?!」

そうじゃない、そう言おうとしたが言葉は続かなかった。何故なら、反論しようと横を振り向いたら、ちょうど横転したトラックがこちらに突っ込んでくるところだったから。何かに当たるような感覚がして、すぐあと全身に激痛がはしったあと、僕の意識は途切れてしまった。

………今思えばなんでこんなバカな会話が『最期』だったのだろうかと少し後悔した。

次に目が覚めた時には見知らぬ場所にいた。妙に体が軽い。……もしかしなくても、僕は死んでしまったんだと悟る。

「……主」

もうちょっと生きてたかったなぁ……。てか、まだ漫画揃ってないし、あのアニメの続きも気になるし。てかまだ、あの夢小説の続き見てない………。そして、

「……おい」

母さんに父さん。先に逝ってしまう僕をどうか許してください。

「おい、そこの主、話を聞いておるか」

「はいー?」

誰かに呼ばれ声がした方に振り向けば、そこにはフードを被った人がいた。………声低いし、多分男の人だな。にしても、

「………なぁんか、この流れ僕は知ってるぞー」

死亡したはずなのに見知らぬ場所にいる。そして、目の前には謎の人物。……まさかねぇ?

「……多分、主が思ってることは正しいと思うぞ」

「じゃあ、僕がお兄さんの思ってること言ってあげるー」

「ほう?では言ってみろ」

「『お前の願いを一つ叶えてやろう』」

「……正解だ」

………当たっちゃったかぁ……。これ、夢小説でみたやつなんだけどねぇ?

「それで本当に叶えてくれるんですか?」

「ああ、もちろんだとも」

……夢小説だと、ここで主人公は『○○の世界に行きたい』と言うわけだが、

「んじゃあさ、もう一度生き返らせてよ。まだやりたいことあるしねー?」

僕はそんなことしない。二次元とは液晶という壁を挟んだところから見るからこそ萌えるのだ。あんなフィクションのようにやりたい放題できるわけがないし……、っていうことを考えていたわけだが、

「…………生き返るというのは可能だが、あの世界に生き返ることは無理だぞ」

「は?」

どうやら、願いは無理そうだ。

「主はあの世界では死人扱い。そんななか生き返ったら、主、ただのゾンビじゃないか」

「え、つまり手遅れってことー?」

「ああ、即死だった。あの世界ではもう主は故人として扱われている。それに、ここにおるっていうことはそういうことだろう?」

「え、ちょ、待って待ってー?なんであの世界で僕は故人として扱われてるのー?僕死んだのついさっきだよー?」

「……いや、あの世界ではもう二日すぎてる」

「わおー。時過ぎるの早いねー」

「まあ、仕方ないことだろう」

申し訳ないというオーラがお兄さんからあふれでている。………まあ、もう死んだ者扱いされてちゃ仕方ないか。

「……んじゃあ、別の世界で良いよ。僕はまだ僕として生きたい。ここで死ぬのは嫌だ」

………あー結局こうなるのか。いやでも仕方ないじゃないか。僕まだ14年しか生きてないんだよ?そう願ってしまうのはしょうがないと思うんだ。

「そうか。ならば、お前が飽きぬ世界に転生させよう」

「行き先はなんとなく察してるけどねー?そういえば、陽はどうしたの?」

僕の隣を歩いていた幼なじみ。……これで生きてたら奇跡だ。

「……奴なら……そうだな。あの世界でいうなら『待機中』だ。主と一緒の世界が良い、と言っていた」

「そっかー。んじゃあ、ちゃっちゃと頼むよー」

まあ、生きてるはずがないか。道路側歩いてたし。……でもまあ、陽に会えるならそれでいいや。

「ああ。それでは、いくぞ」

「はいはーい」

段々目の前が白くなる。……毎日が楽しいといいな。そして、

「お兄さん、ありがとね」

「主の幸せな日々を祈っているぞ」

途切れる直前お兄さんの声が聞こえた気がした。
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