短編
□前世と現世
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突然だが、前世の記憶はあるか?
俺はある。
俺の前世は某国の王で、国を守るため必死に働いていた。
国民からの支持も高く、完璧な王として崇められていた。
実際、俺の働きのおかげで、某国は豊かになり、経済が発展し、今では小国ながら周りの先進国から一目置かれる存在になっている。
その頃、俺には恋人がいた。
そいつは俺と同じくらい綺麗な顔をしていて、強く逞しく、また勉学にも長けていた。
我が軍の総隊長を務めており、俺と同様、周囲からは尊敬され、かなり人気のある人物だった。
だが、俺の前世の記憶は、そこまでで終わっている。
自分が死ぬ直前の記憶がないのだ。
俺はそれが知りたい。
だって気になるのだから。
自分の前世の死因が。
「よぉ。」
不意に聞こえた声に顔を上げると、愉快そうに口を歪めた男が立っていた。
彼はこの学園の風紀委員長を務めている。
そして、彼こそが自分の前世の恋人であった奴だ。
「...何か用か?」
不機嫌そうに顔を歪めて尋ねる。
彼と話す時はいつもそう。
普通に話すことが出来ない。
まぁ、前世で付き合ってたとなると当然といえば当然だろう。
もちろん、前世は前世。現世は現世だ。
奴に恋愛感情は抱いていない。
だが、何故か目を合わせるのが恥ずかしくて、いつも睨んでしまう。
副会長に相談すれば、「それは恋ですよ!」なんて言って熱く語られた。
若干引いた。
「書類を提出しにきただけなんだがなァ?」
そう言って、ニヤニヤ笑う彼に少し腹が立つ。
いっその事、聞いてしまおうか?
前世の記憶はありますか?